2020年度 京都力学系セミナー
2020 Kyoto Dynamical Systems seminar
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当面の間,オンラインで不定期に開催します.
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- 宇敷 重廣氏の web ページは京都力学系セミナー
のサポートの元、数学教室のサーバに置くことになりました。
The web page of Shigehiro Ushiki is now
hosted by Department of Mathematics, with the support of Kyoto
Dynamical Systems Seminar.
講演のタイトルと概要(新しい順に並べてあります)
Titles and Abstracts
- 1月29日(金)15時30分から
- 原 誠人 氏 (京都大学)
- リザバー計算によるカオス的時系列予測における力学系の学習について
- Abstract:
-
リザバー計算は時系列を自然に扱える点に特徴がある機械学習手法であるが,他の手法と同様に,その数理的機構は十分に解明されていない. 一方で,リザバー計算による時系列予測は「リザバー予測」と呼ばれる段階では自励力学系として,それよりも前の「予測以前」と言うべき段階では半直積力学系として定式化することができる. 本講演では,「リザバー予測」の段階については時系列を生成する力学系がリザバーの相空間に再現されたと考えられる数値計算結果を示し,「予測以前」の段階については理論化の端緒となり得る結果としてある自然な仮定の下でリザバー計算に関する不変断面定理が成り立つことを証明する.
- 12月25日(金)
- 臼杵 峻亮 氏 (京都大学)
- On perturbations of the Ising model
- Abstract:
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It is known that phase transition occurs on the Ising model, that is, there exists $L_c>0$ such that the Ising model has the only one equilibrium state if the inverse temperature parameter $L>0$ satisfies $L<L_c$ and has more than one equilibrium states if $L>L_c$. We perturb the interaction defining the Ising model. Perturbations correspond to some influence from the surroundings to the system or some noise in the interaction. In this talk, we show that the uniqueness of the equilibrium state persists under perturbations for small $L$ and the non-uniqueness also persists under symmetric perturbations of interactions for large $L$.
- 12月4日(金)
- Johannes Jaerisch 氏 (名古屋大学)
- Multifractal analysis of Birkhoff averages for non-uniformly expanding Markov interval maps
- Abstract:
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For non-uniformly expanding Markov interval maps we establish a conditional variational formula for the mixed multifractal spectrum of Birkhoff averages of countably many observables, in terms of the Hausdorff dimension of invariant probability measures. By applying this result to the Renyi map, we are able to investigate the arithmetic mean and the asymptotic frequency of digits of the backward continued fraction expansion of real numbers. We also discuss applications to the Bowen-Series map associated with Fuchsian groups with parabolic elements, which allows us to study cusp windings of the geodesic flow on the associated hyperbolic surface. This is a joint work with Hiroki Takahasi (Keio University).
- 11月20日(金)
- 宇敷 重廣 氏
- 初等数学で構成する複素曲面の力学系
- Abstract:
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複素力学系が定義できる複素曲面として有理曲面がある。特に3次曲線を保つ複素射影空間の双有利変換をもとにして構成できるものは初等数学の手段で実現可能である。そうしたもののうち、有理型形式で与えられる体積を保存するものは(私にとって)面白い。K3曲面の力学系は体積の倍率が1の冪根になることが多いが、ここで構成するものは、体積の倍率が1となるもので、手軽に計算可能なものである。K3曲面の力学系のトイモデルとも言える。
- 11月6日(金)14時から
- 中島 由人 氏 (京都大学)
- $\mathcal{M}_n$は連結である
- Abstract:
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2以上の自然数nに対して定義されるフラクタルn角形は, 単位円盤の点でパラメトライズされる, 平面上のあるn個の縮小的な「線形」写像からなる反復関数系の極限集合であり, 著しい性質として回転対称性を有する. 自然数nを固定したときにフラクタルn角形が連結になるパラメータ集合$\mathcal{M}_n$についてこれまで様々な研究が行われてきた. 特に$\mathcal{M}_2$は連結であることがBouschにより知られている.
本講演では, Bouschの方法を拡張して, ある条件をみたす複素平面内のコンパクト集合の元を係数にもつ冪級数の族の零根たちの単位円盤上の集合が連結になることを示し, その応用例として,
全てのnで$\mathcal{M}_n$は連結であることを示す.
なお, 本講演で報告するこれらの結果の詳細についてはarXiv:2008.12915を参照されたい.
- 10月16日(金) 15時から
- 横山 知郎 氏 (京都教育大学)
- Generalizations of topological invariants of flows and
topological reconstructions of flows from their time-one maps
- Abstract:
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In this talk, we consider when the time-one map reconstructs
the topology of the original flow. We show that a quotient space of
the orbit space, called abstract weak orbit space, of Hamiltonian
flow with finitely many singular points on a compact surface is
homeomorphic to the abstract weak orbit space of the time-one map up
to arbitrarily small reparametrization, and that the abstract weak
orbit space of a Morse flow on a compact manifold and the time-one map
is homeomorphic.
Moreover, the abstract weak orbit spaces are topological invariants
which are generalizations of both Morse graphs of flows on compact
metric spaces and Reeb graphs of Hamiltonian flows with finitely many
singular points on surfaces. In addition, we show that the abstract
weak orbit spaces are finite for several kinds of flows on manifolds,
and we state non-triviality of the abstract weak orbit spaces using
several examples (e.g. Hamiltonian flows on surfaces, reducible
chain-recurrent homeomorphisms, pseudo-Anosov homeomorphisms, chaotic
flows in the sense of Devaney, non-identical non-minimal
non-pointwise-periodic volume-preserving flows.).
- 7月17日(金)13時から
- 上原 崇人 氏 (岡山大学)
- 有理曲面上の双有理写像による力学系
- Abstract:
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有理曲面上の双有理写像は、2次元複素力学系の中でも重要な複素エノン写像を(ある意味で)含む豊富なクラスである。本講演では、双有理写像の反復合成による力学系に対して定義される、エントロピー及び力学系次数とよばれる量について考察する。さらに時間があれば、特定のクラスの双有理写像に対して、最大エントロピーを実現する不変測度の性質についても言及する。
- 7月3日(金)14時から
- 宇敷 重廣 氏
- 不変3次曲線を持つ複素曲面の自己同型に見られる、特殊な不変曲線について
- Abstract:
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複素射影空間の双有理変換は、ある条件を満たすとき、複素曲面の自己同型写像を誘導する。既知の自己同型写像のほとんどは不変な3次曲線を持つ。これと交わらない不変曲線が数値実験によって見出された。この講演ではこうした曲線が存在することを、幾つかの場合について証明する。
- 6月5日(金)16時から
- 浅岡 正幸 氏 (同志社大学理工学部)
- $C^1$-stable intersection of Cantor sets in higher dimensions
- Abstract:
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縮小的な反復写像系が定める「regularなCantor集合」は力学系の研究における
基本的な対象である.こうしたregularなCantor集合たちが写像系を摂動しても
交わり続けるという「交わりの安定性」はホモクリニック分岐の解析において
重要である.例えば,1次元ユークリッド空間内のCantor集合についての
Newhouseによる交わりの$C^2$-安定性についての理論は,ホモクリニック接触の
安定性や,無限個の吸引的な周期点を持つ力学系の局所的な$C^2$-genericityなどの
重要な応用を持つ.また,Moreiraは1次元ユークリッド空間内のregularな
Cantor集合の組は$C^1$-安定に交わりを持つことはないことを証明しており,
このことから2次元C^1微分同相写像については双曲的なものがgenericで
あるだろうという「2次元$C^1$ Smale予想」に対する強い傍証が得られる.
この講演では,2次元以上においてはMoreiraの結果の類似は成り立たないことを示す.
すなわち,regularなCantor集合の組で,その交わりが$C^1$-安定であるような例を与える.
講演者と聴衆の気力と体力が続くようならば,この結果の応用として得られる,
4次元以上の微分同相写像において著しく退化したホモクリニック接触が局所的に
$C^2$-genericに起きるという結果についても触れたい.
なお,講演で報告するこれらの結果の詳細については arXiv:1911.08091 を参照されたい.
世話人:
稲生 啓行(京都大学)
杉山 登志(岐阜薬科大学)
連絡先:
稲生 啓行 (inouQmath.kyoto-u.ac.jp, replace Q with at-mark)
〒606-8502 京都市左京区北白川追分町
京都大学大学院理学研究科 数学教室