無理数の有理数による近似精度は、無理数の正則連分数展開と結びつけて研究されてきた。特に、badly approximable number と呼ばれる無理数は、正則連分数にあらわれる digit の列が有界なものである。このような数に対する近似精度は Lagrange spectrum と呼ばれる対象を通して研究されてきた。Lagrange spectrum の研究は、word combinatorics と密接な関係がある。また、Lagrange spectrum はある意味で等差数列の小数部分と関連がある。
一方、近年は等比数列版の類似物である multiplicative Lagrange spectrum の研究もされてきた。特に、オリジナルおよび multiplicative 版のラグランジュスペクトラムの discrete part は、周期と非周期の境界を表す。このことから、discrete part の研究は相転移現象の研究に類似したものとみなすことができる。本講演では、multiplicative Lagrange spectrum の派生として、固定した実数 η に対して以下の集合を研究対象として取り上げる:
L(10; η) = { limsup_{n→∞} ||ξ 10^n - η|| | ξ ∈ R }.
ここで、||x|| は実数 x から最も近い整数への距離を表す。η = 0 の場合がオリジナルの multiplicative Lagrange spectrum である。η を変化させた場合の discrete part の分岐について紹介する。