カイメン⽔溝系におけるポンプ・管路設計の流体⼒学的最適化

開催日時
2026/04/21 火 16:45 - 17:25
場所
6号館809号室
講演者
小川拓海
講演者所属
京都大学数学教室
概要

カイメン(海綿動物⾨)は地球上に現存する多細胞動物の中で進化的に最も古い動物⾨で
あるとされており,6億年以上前から存在している.多細胞動物の共通祖先に最も近い存在
であることや,ボディプランがシンプルであることから,進化⽣物学や形態発⽣学における
重要なモデル⽣物である.カイメンは淡⽔海⽔中に⽣息し濾過摂⾷を⾏うが,⼤量の⽔を処
理することができるため海洋⽣態系等における栄養循環の根幹を担っている.体内に⽔を
流すシステムは⽔溝系と呼ばれ,流⼊管と流出管,その両者の間でポンプの役割を果たす襟
細胞室から構成される.襟細胞室は鞭⽑を有する襟細胞が鞭⽑を内向きに球形に並んだ構
造で,鞭⽑打を球の中⼼に向かって伝播させることで流れを引き起こす.
⽔溝系による流体輸送は数億年にわたる⽣存に寄与してきたと考えられるが,その詳細
な輸送メカニズムは明らかにされていない.本発表では,数値シミュレーションと実験によ
り,襟細胞室ポンプ及び流出管による流体輸送を調査した結果を報告する.襟細胞室内のい
くつかの内部構造が流れの⼀⽅向性を強め,鞭⽑波数や出⼝径はポンプ機械効率を最適化
する形状になっていることが明らかになった.また,計測された⽔溝系流出管の合流形状
は,⾎管などの分岐形状に⾒られるマレーの法則には従わない傾向が⾒られ,シミュレーシ
ョンにおいても,壁⾯からの流⼊を伴う合流管は合流形状がマレーの法則に従わない⽅が
流量や効率が⾼くなることがわかった.
カイメン⽔溝系において,襟細胞室ポンプや⽔路形状は流体輸送を最適化していること
が⽰唆され,これらの知⾒は,カイメンの⽣理機能に対する理解を深めるものである.