凸多面体内部領域のベクトル場再構成

開催日時
2025/10/01 水 16:45 - 18:15
場所
6号館809号室
講演者
鍛治静雄
講演者所属
京都大学 大学院理学研究科 附属サイエンス連携探索センター
概要

定義域の有限部分集合上での値から関数を推定する関数補間は,科学やデータサイエンスにおける基本的な問題である.
特に R^nから R^nへの関数の場合にはベクトル場再構成とも呼ばれ,力学系の推定や geometry processing において多様な手法が提案されてきた.
代表的な既存手法としては,Radial Basis Function などの基底関数系による線形結合でフィッティングする方法や,PINN(Physics-Informed Neural Network)のようにニューラルネットワークを用いる方法などが挙げられる.
ベクトル場再構成では,しばしば境界条件を指定したい場合があるが,既存手法では境界条件違反に対するペナルティー項を導入する,いわゆるソフト制約の形で対処することが多い.しかし,この方法では境界条件を厳密には満たさないという欠点がある.
本講演では,任意次元の凸多面体内部領域において,slip 境界条件(法線方向の速度が0)のもとで多項式ベクトル場によるベクトル場再構成手法を紹介する.
鍵となるのは,境界条件を満たす多項式ベクトル場がなす加群と,凸多面体の境界を定義する方程式のJacobian idealのsyzygyとの対応関係である.
この syzygy 計算は Gröbner 基底を利用して効率的に実行できるため,効率的な計算機実装も含めて,ベクトル場再構成の問題への解が構成できる.
この講演は Junyan Chu 氏(九州大学)との共同研究に基づく.