$\mathbb{R}^{2n}$における星型領域のある種の一般化として, Liouville領域と呼ばれるシンプレクティック多様体のクラスがある. これはHamilton力学系や複素解析などの研究の流れの中で自然に定式化されてきたもので, シンプレクティック幾何における基本的な舞台を与えている. 典型例として余接束やStein多様体などがある. その定義から, Liouville領域はシンプレクティック構造を外向きに拡大するベクトル場を許容する(これをLiouville力学系と呼ぶことにする). 特に, この力学系がMorse関数に勾配的であるときWeinstein領域と呼び, 適合するハンドル分解が存在して扱い易い対象となる. 90年代のMcDuff, Geiges, 三松の仕事において, Weinstein構造を許容しないLiouville領域の存在が示されており, その具体例の背後にはAnosov双曲力学系が潜んでいる. どのようなLiouville力学系が勾配系に変形できるかという基本的な問いがあり, 現在でも大きな課題として残されている. このような背景のもと, 講演者らが近年取り組んでいる研究を紹介したい.
講演では基本的な定義や先行研究などを概観した後, Huangによる接触構造の縮小写像を用いたLiouville領域の懸垂構成を導入し, これに関連して得られた結果について説明する. 特に, このような縮小写像が存在するための接触多様体としての条件や, ある意味で複雑なLiouville領域の具体例を与える(吉安徹氏との共同研究に基づく). その他, 不変集合の接触/シンプレクティック多様体の部分多様体としての性質などについても, 時間の許す範囲で触れたい.
Contact contractions and Liouville domains
開催日時
2024/12/06 金 15:00 - 17:00
場所
3号館108号室
講演者
小川 竜
講演者所属
東海大学
概要