結び目全体の空間のホモトピー型と、その部分モデルとして現れるグラフ複体について

開催日時
2024/10/29 火 15:00 - 16:30
場所
6号館609号室
講演者
吉岡玲音
講演者所属
東京大学大学院数理科学研究科
概要

結び目不変量の重要なクラスにVassiliev不変量というクラスがある. この不変量のクラスは、結び目全体の空間のコホモロジーを計算するあるスペクトル系列における、$E_{\infty}$項の対角部分(0次コホモロジーに対応する)として、Vassilievによって導入された. このスペクトル系列の$E_0$項はグラフ複体という組み合わせ対象であり、Kontsevichは対角部分が実係数で$E_1$退化することを、いわゆるKontsevich積分を用いて証明した. さてこの経緯を踏まえると、グラフ複体のコホモロジー類が結び目の空間の非自明な高次コホモロジー類を与えるか (Vassilievスペクトル系列の非対角部分の$E_1$退化性)は自然で重要な問題である. Bott, Taubesらが導入したBott-Taubes積分という方法はこの$E_1$退化性の証明に有用であると予想されている. しかしこの積分がコチェイン写像を与えるかどうかは分かっていない. 本講演では結び目の空間をはめ込みの空間(球面のループ空間と弱同値)で割った空間に対し、グラフ複体とBott-Taubes積分の変種を導入し、この積分がコチェイン写像を与えることを示す. 尚この方法は高(余)次元結び目の空間に対しても適用可能である.