開催日時
2024/11/01 金 15:00 - 17:00
場所
3号館108号室
講演者
塚本 真輝
講演者所属
京都大学
概要
複素平面から複素多様体への正則写像は整正則曲線と呼ばれ,ネヴァンリンナ理論の一般化として一世紀近くにわたり研究されている.この講演では整正則曲線に対して従来とは大きく異なるエルゴード理論的アプローチを提案したい.複素平面から複素射影空間への1-リプシッツ正則写像をブロディ曲線と呼ぼう.ブロディ曲線全体はコンパクト空間になり自然な群作用を持つ.これを力学系とみなして,その上の不変確率測度を研究したい.
講演の最初の主結果は,ブロディ曲線からなる空間上の任意の不変確率測度に対して,そのレート歪み次元があるポテンシャル関数の積分で上からおえられることを主張する.この定理は可微分エルゴード理論におけるルエル不等式の類似とみなすことができる.
講演の第二の主結果は,この「ブロディ曲線に対するルエル不等式」の等号を成立させる不変確率測度が豊富に存在することを主張する.
主定理の証明は「ポテンシャル付き平均次元に対する変分原理」に基づいており,これは双曲力学系のエルゴード理論における「熱力学形式」のアイデアに動機づけられている.詳しい内容に興味のある方は論文arXiv:2403.11442を見てほしい.