自己回復機能を有する自律分散システム:経路探索問題への応用

開催日時
2023/12/05 火 16:45 - 18:15
場所
6号館809号室
講演者
上田肇一
講演者所属
富山大学学術研究部理学系
概要

自律分散システムにおいては,局所的な障害が発生した際にも要素システムが適
切に振る舞うことでシステム全体の機能が維持されることが期待される。そのよ
うな自己回復機能の数理的理解は脳神経系など生命システムの環境適応性の理解
においても重要である。本研究では,具体的なネットワーク上の力学モデルの作
成により,自律分散システムの自己回復機能に必要な条件を解明することを試み
た。具体的な課題として,現実的な問題に広く応用可能な経路探索問題について
考察し,次の性質を持つ数理モデルを構築した。

(a) ネットワーク内に解(与えられた境界条件の2点を結ぶ経路)が存在する場
合,発見が完了するまで探索を継続する。
(b) 解を発見した後,ネットワークの切断や故障が発生した場合には,新たな解
の探索を開始する。
(c) 解が存在しない場合は,計算を有限時間で終了する(諦める)。

特に,(c)の実現には工夫が必要であり,ノードダイナミクスを記述するモデ
ル作成には post-inhibitory rebound 現象や SNIC 分岐などを用いる。講演で
は,(a)から(c)を満たすような性質を持つ数理モデルを紹介し,現実的な問題
(ロボットアーム制御など)への応用可能性について触れる。