時間非整数階拡散方程式とそのパラメーター決定逆問題について

開催日時
2023/10/10 火 16:45 - 18:15
場所
6号館809号室
講演者
劉 逸侃
講演者所属
京都大学数学教室
概要

近年,不均質媒質における粒子の特異拡散を表す時間方向に非整数階微分をもつ拡散方程式の基礎理論が整備され,関連する数値解析と逆問題も盛んに発展してきた.通常の放物型方程式との類似性が多く解明された中,時間微分階数に依存する遅い減衰を代表とする漸近挙動が決定的な違いであり,これを活用したパラメーターを決定する逆問題が研究されてきた.
本講演は非整数階拡散方程式の順問題に関する先行研究をレビューした上,特に時間微分階数の決定について,最新結果を二つ取り上げて紹介する.
1. 解の短時間漸近挙動による階数決定逆問題の一意性:先行研究では,観測データが一致すればパラメーターも一致するという一意性は示されたが,データが一致しない場合は分かっていない.本研究は,初期時刻近くの空間一点における漸近挙動のみを用いて,階数の一意性を証明した.さらに観測点がランク条件を満たせば,初期値または源泉項も一意的に決まることを示した.
2. 結合系の一成分の情報による階数決定逆問題の一意性:非整数階時間微分をもつ反応拡散系への拡張を念頭に,線形の時間非整数階拡散方程式の結合系の解の適切性を構築し,漸近挙動を解明した.さらに成分間の結合を利用し,一成分の空間一点における観測データを用いてすべての階数の同時決定の一意性を証明した.