Kobayashi--Warren--Carterエネルギーの特異極限について

開催日時
2022/11/29 火 16:45 - 18:15
場所
6号館809号室
講演者
岡本 潤
講演者所属
京都大学 高等研究院 ヒト生物学高等研究拠点
概要

本講演ではKobayashi-Warren-Carterエネルギー(以下KWCエネルギー)の特異極限問題について考察する. KWCエネルギーとは、多結晶物質の結晶粒界のダイナミクスを記述するモデルとして、2000年代初頭に小林亮、Warren、Carterによって与えられたモデルである.KWCエネルギーとよく似た形を持つ汎関数として、AmbrosioとTortorelliによって与えられたMumford--Shah型汎関数の近似エネルギーがあるが、こちらのエネルギーは目的関数の不連続点がどこにあるのかという情報だけが影響する.しかしKWCエネルギーにおいては、不連続点の場所の情報に加えてさらに不連続点における値の情報が必要となる.したがって低次元の測度0の集合を無視してしまうようなLebesgue空間などの位相で特異極限を考察することは不十分である.我々は「関数のスライス-グラフ収束」というより細かい位相を導入することにより、多次元のKWCエネルギーの精密な特異極限の特徴づけに成功した. 本講演の内容は、儀我美一氏(東京大学)、榊原航也氏(岡山理科大学)、上坂正晃氏(東京大学/Arithmer)との共同研究に基づく.