$\times a \times b$作用に関する経験測度とそのirregular set及びエントロピーとの関係について

開催日時
2022/06/24 金 15:00 - 17:00
場所
6号館809号室
講演者
臼杵 峻亮
講演者所属
京都大学
概要

(このセミナーはハイブリッドで開催しますが,対面での参加は学内者に限ります.)

二つの$2$以上の整数$a$と$b$に対し、$T_a$と$T_b$をそれぞれ$\mathbb{R}/\mathbb{Z}$上の元を$a$倍、$b$倍する写像とし、これらが定める$\mathbb{R}/\mathbb{Z}$上の$\mathbb{Z}_{\geq 0}^2$作用を$\times a \times b$作用と呼ぶ。$a$と$b$が乗法的に独立であるとき、$\times a \times b$作用に関し不変かつergodicな$\mathbb{R}/\mathbb{Z}$上の確率測度で$T_a$または$T_b$の測度論的エントロピーが正になるものはLebesgue測度のみであることが知られているが、エントロピーが$0$になる非自明な不変かつergodicな確率測度の存在は、現在全くわかっていない。
この講演では、$\mathbb{R}/\mathbb{Z}$の各点$x$に対し$\times a \times b$作用に関する経験測度を考え、経験測度がどんな確率測度にも収束しないような$x$の集合(irregular set)のHausdorff次元が$1$であることを示す。また、十分小さい$t>0$に対し、経験測度がある不変確率測度でエントロピーが$t$以下であるものに集積するような$x$の集合のHausdorff次元が$\leq O(\sqrt{t})$を満たすことを示す。この結果からHausdorff次元が$0$の集合の補集合で成り立つ、$\times a \times b$作用の軌道に関するある種の一様分布定理が導かれる。