物理レザバー計算による形態型計算と脳型計算

開催日時
2022/05/24 火 17:15 - 18:45
場所
6号館809号室
講演者
明石 望洋
講演者所属
京都大学 大学院理学研究科
概要

生物の身体と脳の情報処理様態に触発された情報処理機構として形態型計算 (morphological computation) と脳型計算 (neuromorphic computing) がある.形態型計算とは身体の形態特性や動的特性に情報処理の一部を外注させる情報処理機構であり,脳型計算は神経回路網による情報処理をハードウェアにより模擬する情報処理機構である.形態型計算と脳型計算の双方の研究の中で個別に取り入れられてきた手法に物理レザバー計算がある.物理レザバー計算とは物理系を入力付き力学系とみなすことにより物理系を情報処理資源として活用する手法である.本研究では,レザバーの数理に基づき形態型計算と脳型計算を共通基盤の上で扱うことで,両者の情報処理特性の数理的解析と実装を行う.実装については,形態型計算では柔らかいアクチュエータある McKibben 型空気圧人工筋肉を,脳型計算では小型,高速,高エネルギー効率のデバイスとして有望視されるスピントルク発振器を用いる.初めに,レザバー計算分野において考案された情報処理容量という指標に基づいて形態型計算・脳型計算それぞれの情報処理能力を定量し,両者の固有性を明らかにする.更に,分岐現象に基づくレザバーの情報処理能力の変化の系統的な解析を行う.最後に,ここまでで明らかになった形態型計算と脳型計算の特性を最大限活かし,両者の情報処理の分担の考案を行う.
本講演は東京大学の國吉康夫教授,中嶋浩平准教授,川嶋健嗣教授,産業技術総合研究所の谷口知大様,常木澄人様,理化学研究所の山口皓文様,株式会社ブリヂストンの若尾泰通様,櫻井良様,西田三博様,城武智様との共同研究に基づく.