アトラクターのトポロジーに着目した力学系における因果推論

開催日時
2021/04/20 火 16:45 - 18:15
講演者
板東 弘晃
講演者所属
京都大学情報学研究科システム科学専攻
概要

観測した時系列データから変数間の因果関係を特定することは, 脳科学, 個体生態学など, 力学系と見做して調べる分野における重要な問題である. 近年提案された手法 (convergent cross mapping, CCM) は, 遅延埋め込みによるアトラクター再構成を時系列データに適用し, モデルを仮定しないことで, この問題に関して大幅な進歩を与えた. しかし, この既存手法は, 各変数から同時刻に観測された時系列データを要求し,そのような観測が難しいケースには適用しづらい. 本講演では, データの欠損に対する頑健性やデータの計測時刻への非依存性を目的に, アトラクターのトポロジーに着目する因果推論の手法を提案する. 因果関係を持つ2つの力学系があれば, 上流のアトラクターは下流のアトラクターに埋め込めるため, 下流のアトラクターと, 2つの系を合わせた全体の系のアトラクターは同相である. ここで, 下流とは,支配方程式が上流の状態に依存する系を意味する. 提案手法では, これを利用し, アトラクターのトポロジーをパーシステントホモロジーを用いて比較することで, 因果関係を特定する. 本講演の内容は,鍛冶静雄氏(九州大学)と谷口隆晴氏(神戸大学) との共同研究に基づく.