円環上の Szegö 核を共分散核とするランダムな解析関数とその零点分布

開催日時
2020/10/07 水 16:30 - 17:30
講演者
香取 眞理
講演者所属
中央大学理工学部
概要

内径が $q \in (0,1)$, 外径が 1 の円環 ${\mathbb{A}}_q$ 上に定義されたランダムな解析関数について考察する.単位円板 ${\mathbb{D}}$上のランダムな解析関数とその零点分布に関するPeres--Virág (2005) の結果を楕円関数拡張することを目的としたものである.本講演では,各係数が独立な複素正規乱数で与えられるLaurent 展開としてランダムな解析関数が定義され,その共分散核が$r>0$ で径数付けられた${\mathbb{A}}_q$ 上の Szegö 核に等しい場合を議論する.この 2 係数 $(q, r)$ をもつSzegö 核は Mccullough--Shen (1994) によって導入されたものであり,${\mathbb{A}}_q$ 上の重み付き Hardy 空間の再生核を与える.この Gauss 型解析関数とその零点分布が従う確率法則は,座標 $z \in {\mathbb{A}}_q$ の $q$--反転 $z \to q/z$ と径数変更 $r \to q^2/r$ とからなる変換に関して対称性をもち,特に $r=q$ のときには ${\mathbb{A}}_q$ を自身に写す共形変換に対して不変である.Mccullough--Shen の重み付き Szegö 核を共分散核としてもつこの Gauss 型解析関数に零点条件を課すと,再び重み付き Szegö 核を共分散核としてもつ Gauss 型解析関数が得られるが,重み $r$ は条件として課した零点に依存して変更される.この特性により,この Gauss 型解析関数の零点分布の相関関数は一般にパーマネントと行列式の積として与えられることが導かれる.${\mathbb{D}}$上に定義された Peres--Virág のGauss 型解析関数の零点分布は行列式点過程であった.「パーマネント・行列式点過程」として与えられる我々の零点分布が行列式点過程とは真に異なることを示すため規格化された 2 点相関関数を詳しく調べたので,ここではその結果も報告したい.最後に,$r>0$ に保った上での $q \to 0$ 極限と,さらに $r \to 0$ の極限をとった場合を考察する.前者で得られる零点分布は単位円板から原点を除いた${\mathbb{D}}^{\times}$上の点過程となるが,それは依然としてパーマネント・行列式点過程である.後者においてはじめて,系は(漠位相の下)Peres--Virág と同じ確率法則に従うことになる.前者は後者の三角関数拡張と見なせる.本講演は白井朋之氏(九大IMI)との共著論文(arXiv:math.PR/2008.04177)に基づく.

【開催方法・参加方法】
本談話会はZoomを用いてオンラインで開催します.それに伴い事前登録が必要です(集中講義の申し込み時に談話会の参加も申し込まれた方は不要です).下記のリンク先から登録を行ってください.登録の締め切りは10月2日18時です.

https://forms.gle/bJFXwLMrRdGhU5wT8 (Googleフォーム)