負の定数より小さいラグランジュ乗数に対応する Hartree-Fock 汎関数の臨界値の有限性

開催日時
2020/05/15 金 15:30 - 16:30
講演者
蘆田 聡平
講演者所属
学習院大学理学部数学科
概要

Hartree-Fock 方程式は複数の電子が存在するときの固有値問題の近似固有関数が満たす偏微分方程式である. Hartree-Fock 方程式を解くことは連立非線形固有値問題となる. Hartree-Fock 方程式は Hartree-Fock の汎関数の臨界点が満たす方程式であり,対応する臨界値は多電子固有値問題の固有値の上界評価を与える. Hartree-Fock 方程式を自己無撞着場の方法(SCF 法)で解いて臨界値を求める際に SCF 法の収束を考えるために,あらかじめ臨界値の大まかな分布を知っていることは重要であると考えられる. 本講演では固定された負の定数より小さい Hartree-Fock 方程式の固有値に対応する臨界値が高々有限個であるという結果について説明する.
 証明では臨界値が無限個あるとして矛盾を導く. まず固有関数列の一様な指数減衰を証明する. 固有関数の指数減衰を使って固有値の集積点が固有値であることを示し,対応する固有関数に固有関数の列が収束することを示す. さらに対応する固有関数における Hartree-Fock 方程式のフレシェ微分が可逆作用素とコンパクト作用素の和で表せることを示して Fučik-Nečas-Souček-Souček(1972) の実解析的(非線形)作用素に関する結果を用いて矛盾を示す.

備考: 本セミナーはZoomオンラインセミナーとして開催します.