4 次元 Zakharov 系の基底状態エネルギー下の大域適切性

開催日時
2020/04/17 金 15:30 - 16:30
講演者
中西 賢次
講演者所属
京都大学数理解析研究所
概要

Zakharov 系は,プラズマの不安定性を非線形 Schrödinger 方程式(NLS)で説明する際に Zakharov が導出した中間的な近似方程式系で,イオン音速を無限大に飛ばす極限で NLS へ移行する. この極限は波動方程式を楕円型(Poisson)方程式に置き換えるが,その見た目に反して Zakharov 系の方が局所的には解の平滑化効果が強いことが知られている. 他方,大域的な解析では対称性の高い NLS の方が扱い易いため,それら二つの兼合いが問題となる.
 4 次元空間はプラズマとしての物理的意味は無いが,NLS がエネルギー臨界となるため,特に大きな解が数学的に興味深い. この講演では,エネルギー保存量が基底状態(最小エネルギー定常解)より小さいときに,解が時間大域的に存在するかどうかを考え,結果として,イオン音波の L2 ノルムが基底状態より小さければ大域的に存在して有界であることを示す. なお基底状態は NLS と共通であり,4 次元ではエネルギー臨界なので Sobolev 不等式の等号達成元,即ち Aubin-Talenti 解と呼ばれる具体的(有理)関数である.
 証明で中心的役割を担うのは,音波への電場の影響を除去して得られるポテンシャル付き Schrödinger 方程式に対する一様大域的な Strichartz 時空評価である. 解が球対称の場合については,Guo-Nakanishi (arXiv:1810.05794) により,波動方程式に対する profile 分解,Schrödinger 方程式に対する球対称 Strichartz 評価,Zakharov 系に対する normal form を組合せて証明された. 球対称の制限を外すため,球対称 Strichartz 評価の代わりに空間非共鳴性を用いた双線形 Strichartz 評価を導出し,また空間平行移動に対するコンパクト性の解析が必要となる. なお,この講演は Timothy Candy (University of Otago) と Sebastian Herr (Universität Bielefeld) との共同研究に基づく.

備考: 本セミナーはZoomオンラインセミナーとして開催します.