幾何学的量子化におけるスペクトル収束

開催日時
2019/12/10 火 15:00 - 16:30
場所
6号館609号室
講演者
山下真由子
講演者所属
RIMS
概要

幾何学的量子化において, シンプレクティック多様体(M, \omega)上に前量子化束Lが
与えられたとき, そこから量子ヒルベルト空間とよばれる「よい」ヒルベルト空間V
を構成するのが1つの重要な問題である. 知られている構成方法のうち, ケーラー量
子化とは, M上に整合性をもつ複素構造を入れてVを正則切断の空間として定めること
, 実量子化とは, M上にラグランジュファイバー束構造を定め, Bohr-Sommerfeldファ
イバーと呼ばれるファイバー上の平行切断の空間の直和としてVを定めることである.
これらの一見異なる方法により構成された量子ヒルベルト空間が, 様々な例で興味
深い関連を持つことが知られてきた.
今回の講演では, この2種類の方法の間の関係を明らかにするという問題に対して,
測度付き距離空間のGromov-Hausdorff収束の理論を用いた新たなアプローチを解説す
る. ラグランジュファイバー束が与えられたとき, それに適切な意味で収束する複素
構造の族を考え, d barラプラシアンのスペクトルの挙動を考えると, ラグランジュ
ファイバー束が非特異な場合, あるいはトーリック型の特異性のみを持つ場合には,
各Bohr-Sommerfeldファイバーごとに調和振動子を直和したもののスペクトルに収束
するという結果を得た. 特にこの結果は, 適切な状況のもと, ケーラー量子化による
量子ヒルベルト空間が実量子化によるものに収束することを意味する. K3曲面上の楕
円ファイブレーションなど, より一般の特異性を持つ場合への展望も含めてお話しし
たい. この研究は服部広大氏(慶応大学)との共同研究である.