一般化超幾何関数を用いた遺伝子発現モデルの解表示とその応用可能性について

開催日時
2019/10/23 水 16:30 - 18:00
場所
6号館809号室
講演者
飯田 渓太
講演者所属
大阪大学蛋白質研究所
概要

生命の最小単位である細胞は,遺伝子発現と呼ばれる生化学反応を行い,細胞の恒常性維持や環境適応に必要な分子を絶えず産生している.最近,我々は,原核細胞と真核細胞の遺伝子発現系に広く適用可能な数理モデルとして,スイッチ付きの確率バースト消滅過程を考え,その一般化フォッカープランク方程式の定常解を導出することに成功した.この解は,積分空間において一般化超幾何関数で書かれ,逆変換すると多重積分の形になる.厄介なことに,被積分関数は真性特異点や境界発散型の複素重み関数を含んでおり,グラフの概形を描くことさえ難しい.この障害は,例えば実データを用いてパラメータ推定を行う際など,尤度関数の計算を困難にするため,応用上重大な問題である.講演では,先ず簡単な場合を考え,我々の解が大腸菌ラクトースオペロンの確率モデルになることを,生物データを用いて実証する.一般的の場合の応用可能性については,現在アイディアを検証中である.
 本研究は,尾畑伸明氏(東北大学・教授),木村芳孝氏(東北大学・教授)との共同研究に基づく(Iida, Obata, Kimura, J. Theor. Biol. 465, 2019).