サンプル写像のパーシステンス解析

開催日時
2019/07/30 火 16:30 - 18:00
場所
6号館809号室
講演者
竹内 博志
講演者所属
中部大学
概要

本講演では,講演者のサンプル写像のパーシステンス解析の研究について,動機・先行研究・理論的枠組み・最近の結果を紹介する.
位相的データ解析では,データ中のトポロジー(穴や空洞など)とその大きさを数学的に表す,パーシステントホモロジーが中心となって,データ解析手法の研究が進められている.パーシステントホモロジーは,データのノイズに強いこと(安定性)が保証されており,数値計算との相性が良い.開発された手法は計算機に実装され,材料科学・画像解析・機械学習などを交えながら,実際のデータへの応用が盛んに行われている.
サンプル写像とは,ある全体の写像があったとき,その有限な部分集合(サンプル)のことである.サンプル写像の研究では,サンプル写像のみから全体の写像を復元することを目標とする.この動機は実データ解析に基づくもので,人間の観測出来るデータは高々有限であり,観測データの動きを支配する写像(力学系)が,サンプル写像のみからどの程度復元できるかを調べることで,観測データの振る舞いを理論的に特徴付けることが出来る.本研究では,2015年にH. Edelsbrunnerらが提唱したサンプル力学系の固有空間解析の手法を参考に,全体の写像のホモロジー誘導写像を復元し,パーシステントホモロジーを用いて解析する手法を提案した.これにより,観測データのトポロジカルな振る舞いを抽出する.この解析手法はノイズに対して安定性があり,誤差を事前に評価出来る.
最後に,時間に余裕があれば,講演者の最近の応用研究についても紹介したい.