急速反応極限問題:解析と応用

開催日時
2018/06/13 水 16:30 - 17:30
場所
RIMS110号室
講演者
村川 秀樹
講演者所属
九州大学大学院数理学研究院
概要

諸科学における様々な問題は、しばしば反応と拡散を含む連立方程式である反応拡散系によって記述される。例えば、地質学における地中に埋めた核廃棄物の周囲への影響に関する問題は、化学物質の反応と拡散によって記述される場合がある。生態学における多種生物種の分布は、反応(異種間の競争や協調)と拡散(個体のランダムウォーク)により記述され、異種間の競争が非常に強い場合には生物種の棲み分けが起こると考えられている。これらの問題では、拡散に比べて反応が非常に速い状況下にある。これらの問題で、反応率を大きくした極限を考えると、自由境界が現れる。核廃棄物深度処理の極限問題では、どのようにバリアが侵食されていくのかが正確に求められ、有限の反応率を考慮した場合でも、極限問題の解との関係を調べることにより、その影響を見積もることができる。生物種の棲み分けの問題では、生物種の生息領域の形状や変化が正確に求められる。このように、反応項を含む方程式系に対して、その反応率が大きくなったときの極限における解の振る舞いを調べる問題は、急速反応極限問題と呼ばれている。この種の問題は、生態学、生物学、化学、地質学などにしばしば現れる問題である。この種の問題に対して、多くの既存の研究を含む一般的な定式化を行い、その問題について解析する。更に、その応用とする、非線形拡散問題に対する半線形近似、線形近似、数値解析などに話題を展開する。