基本解近似解法による点渦力学系の数値解析

開催日時
2018/04/17 火 16:00 - 17:30
講演者
榊原 航也
講演者所属
京都大学
概要

2次元非圧縮非粘性流体の挙動を解析する上で,Lagrange保存量である渦度を調べることが大きな役割を果たす. 渦をそのままの形ではなく,有限個の点渦の重ね合わせとして近似するのが,点渦力学系である. 点渦力学系は有限次元力学系であり,それ故,今までに様々な数学的知見が蓄えられてきた. 平面内での点渦力学系の研究の歴史は長く,その様相はだいぶ分かってきたと言っても過言ではないと思われる.
そこで,次に考えたいのは,「曲がった空間」の上での点渦力学系の性質を調べることである. 空間が曲がることで,その解析は格段に難しくなることは想像に難くないと思われる. 実際,今までに得られている結果は,比較的シンプルなトポロジー(球面,回転対称な曲面,トーラス等)を持つ場合であり,一般の曲面上での解析はほとんど行われていない. 本講演では,曲面上の流れの統一的な理解への第一歩として,極小曲面上の点渦力学系を考察する.
イメージとしては,空間内にいくつかの閉曲線が配置されており,その間に張られる極小曲面が舞台となる. この問題設定は,懸垂面(シャボン膜)に代表されるように,極小曲面は我々の身近によく見受けられるにもかかわらず,その上での流れの理解が進んでいないことに起因している. 本講演での1つの主張は,基本解近似解法を用いた数値解析が,曲面上の流れを理解するために有力な手法となりうることである. 基本解近似解法は,偏微分方程式に対するメッシュフリー解法であり,今回扱う問題と非常に相性が良い. このことを理解していただくためにも,基本解近似解法について簡単なレビューを行う予定である.
本講演の内容は,清水雄貴氏(京都大学)との共同研究に基づく.