弱ヤコビ形式のマースリフトについて

開催日時
2018/05/18 金 13:30 - 14:30
場所
3号館152号室
講演者
青木宏樹
講演者所属
東京理科大学
概要

マースリフト(齋藤・黒川リフト)とは、指数1のヤコビ形式から種数2のジーゲル保型形式を構成する写像のことである。 この写像はヘッケ作用素を用いて定義されるが、少し計算すれば、元のヤコビ形式のフーリエ係数を使って具体的な式で書き下すことができ、 実際、写像の行き先が保型性を持つことの証明に用いられる。 さて、ジーゲル保型形式については、ケヒャーの主張が自動的に成立し、フーリエ係数があらわれる範囲は限定される。 一方、ヤコビ形式においてはケヒャーの主張は自動的ではなく、 定義の一部に相当する条件が組み込まれている。 そして、マースリフトは、その式を形式的に見る限り、 ケヒャーの主張を(フルに)使っているようには見えない。 では、ヤコビ形式の定義からケヒャーの主張に対応する条件を少しだけ弱めたもの(弱ヤコビ形式)についてマースリフトを行うと、何が得られるのであろうか。 この問題についての考察は、おそらく Borcherds の1995年の論文が最初であり(但し対象は直交群上の保型形式でありジーゲル保型形式とは少し異なっている)、そこからは、解答は有理型のジーゲル保型形式であろうと推察できる。 本講演では、この問題について解説と証明(フルモジュラーの場合)を行い、またいくつかの考察を述べる。