作用素環と共形場理論

開催日時
2018/04/11 水 16:30 - 17:30
場所
3号館110講演室
講演者
河東泰之
講演者所属
東京大学
概要

ムーンシャイン予想とは,位数最大の散在型有限単純群モンスターと,楕円モジュラー関数の間に成り立つ不思議な関係に関する1970年代の予想である.この予想はすでに証明されているが,その過程で頂点作用素代数と呼ばれる新しい代数系が導入された.これはカイラル共形場理論に現れる,円周上の作用素値超関数の族のフーリエ級数展開を代数的に公理化したものである.頂点作用素代数の理論は,ふつう代数学の一部とみなされている.一方,作用素環を用いた場の量子論の研究が古くからあり,これをカイラル共形場理論に適用すると,局所共形ネットの理論が得られる.これはふつう関数解析学の一部とみなされている.頂点作用素代数と局所共形ネットは同じ物理的対象の異なる公理化なので,本質的に「同じ」ものであるはずだが,その正確な関係は最近までわかっていなかった.最近 Carpi, Longo, Weinerとともに,(ある種の)頂点作用素代数と局所共形ネットを直接対応させる方法を発見したのでこれについて解説する.共形場理論,作用素環,頂点作用素代数に関する予備知識は仮定しない.