動的変形ドメインによるパターン形成

開催日時
2017/05/26 金 13:00 - 14:30
場所
6号館809号室
講演者
李 聖林
講演者所属
広島大学理学研究科
概要

細胞周期間期においてゲノムDNAは3次元的に折りたたまれ,細胞種特異的な核構造を形成し,転写を含む種々の核内イベントに深く関与していることが知られている.真核生物におけるほとんどの細胞種では,ヘテロクロマチン領域が核膜周辺に局在しており,これを標準型核構造(conventional nuclear architecture)と呼ぶ.興味深いことに,マウスを含む夜行性哺乳類の光受容細胞の一種である桿体細胞では,ヘテロクロマチンが核中央に局在した逆転型核構造(inverted nuclear architecture)を示す.桿体前駆細胞は標準型核構造を示し,最終分化過程で大々的な核構造の再編成が引き起こされる.ヘテロクロマチンを核膜に繋ぎ止めているLBRとLamin A/Cタンパク質が分化過程で失われることが再編成に必須であることはすでに報告されているが,如何にしてヘテロクロマチンの集合及び核構造の再編成が引き起こされるかは不明であった.
 本研究では,Phase-field法を用いた数理モデルの構築により,核の形が核内クロマチン構造に大きく影響している事を発見し,in vitro実験を用いてその検証を行った.その結果,細胞核の変形が再編成を促進することが強く示唆された.細胞核の変形は動的な細胞システムにおいては普遍的な現象であり,種々の分化過程における核構造の再編成において重要な役割を果たしていると考えられる.