genericな力学系の周期点の個数の増大度

開催日時
2015/04/22 水 16:30 - 17:30
場所
3号館110講演室
講演者
浅岡 正幸
講演者所属
京都大学・理
概要

双曲力学系と呼ばれる統計的によい振る舞いをする力学系に関しては,
その周期軌道の数の増大度は常に高々指数的で,増大度は系の統計的
性質と密接に関係することが知られている.一方で1999年にKaloshin
により,homoclinic接触と呼ばれる複雑な分岐現象が稠密に起きるよ
うな領域においてはgenericな力学系はその周期軌道の数の増大度は
指数的よりも速くなることが証明されている.

では,弱い双曲性を持ち,homoclinic接触からは離れている「部分双
曲系」と呼ばれる系において周期点の数の増大度がどう振る舞うだ
ろうか.双曲力学系と同様に高々指数的になるだろうか,それとも,
homoclinic 接触とは異なるメカニズムによって,指数的よりも速く
なるだろうか?

講演者は,篠原克寿氏とDimitry Turaev氏との共同研究によって,
部分双曲系のダイナミクスのある種の単純化である「区間上の反復
函数系」においてその周期軌道の数がgenericには指数的よりも速
く増大することを証明した.本講演では,力学系の周期軌道の増大
度の問題の歴史の概観した後,指数的よりも速い増大度を引き起こ
すメカニズムについて,Kaloshinが見つけたhomoclinic接触による
ものと講演者たちが見つけたものを対比しつつ解説したい.