箱複体に関するグラフの圏のモデル構造について

開催日時
2024/04/26 金 12:36 - 12:36
場所
6号館609号室
講演者
松下尚弘
講演者所属
京都大学
概要

箱複体とはグラフに対して定義される$\mathbb{Z}_2$-空間であって,その同変ホモトピー不変量が元のグラフの彩色数に下界を与えることが知られていた.箱複体に$\mathbb{Z}_2$-ホモトピー同値を誘導するようなグラフ準同型を弱同値とするようなモデル構造を導入し,これと$\mathbb{Z}_2$-空間の圏が Quillen 同値になることが証明される.本講演ではその証明の詳細について述べたいと思う.
 (左プロパーな)モデル圏のコファイブレーションが満たすべき重要な性質として, gluing lemma がある.しかし単純にグラフの圏のコファイブレーションのクラスを包含写像と定義してしまうと, gluing lemma が成立しない.そこで gluing lemma が成立するようなグラフの包含写像の適切なクラスとして,$r$-NDRという概念を導入する.ここで$r$は正の整数である.$r$が2以上ならば,箱複体に関して gluing lemma が成立することがわかる.
 導入する順序としてはグラフの$r$-NDRの前に,単体的複体の$r$-NDRを定義する.任意の正の整数$r$に対し,適切な回数,重心細分を施すと,単体的複体の包含写像は$r$-NDRになる.$\mathbb{Z}_2$-単体的複体に対しグラフを対応させる方法として,Csorbaの構成というものがある.$\mathbb{Z}_2$-単体的複体の$r$-NDRに対し,Csorbaの構成を施すとそれが$r$-NDRになる.
 グラフの圏から$\mathbb{Z}_2$-単体的集合の圏への関手で,箱複体と$\mathbb{Z}_2$-ホモトピー同値になるようなものが存在するが,その左随伴関手を$A$で表す.この$A$は上記のCsorbaの構成を$\mathbb{Z}_2$-単体的集合に対して同様に考えたものに結果的に一致している.そこで重心細分Sdを適切な回数ほどこし,その後$A$を施すことによって左随伴関手が得られるが,この随伴関手によって誘導されるモデル構造が,グラフの圏のモデル構造になる.