Tricornの「臍の緒」と自己相似性について (Sabyasachi Mukherjee氏 (Stony Brook University) との共同研究)

開催日時
2015/12/18 金 14:00 - 17:00
場所
6号館609号室
講演者
稲生 啓行
講演者所属
京都大学
概要

反正則2次多項式族におけるMandelbrot集合の類似をtricornと呼ぶ。反正則写像の2回合成は正則なので、これは特殊な対称性を持った正則写像の(実解析的な)族と考えることができる。
Mandelbrot集合は局所連結であり、従って弧状連結であることが予想されているが、一方でtricornは弧状連結でない。実際、HubbardとSchleicherは奇数周期の双曲成分の「臍の緒」に収束しないものがあることを用いてこれを示した。彼らの結果を一般化して、自明な場合を除いて全て「臍の緒」は収束していないことが示せたので、それを紹介する。
Hubbard-Schleicherの結果ではくりこみ可能な場合、つまり「小tricorn」(小tricorn的集合)の中の「臍の緒」については扱っていなかった。また、計算機援用証明で具体的な1つのくりこみ可能な例については「臍の緒」が収束しないことは示せていたが、今回完全な結果が得られたことによって、tricornはMandelbrot集合の持つような自己相似性を全く持っていない、つまりtricornの中の任意の小tricorn的集合はtricorn自身とは同相になっていないことがわかった。なぜなら実軸上にある双曲成分には「臍の緒」は自明に収束しており、一方で対応する小tricorn的集合では、それらの臍の緒が収束していないからである。