極小力学系をヒルベルト立方体に埋め込む.

開催日時
2015/10/09 金 14:00 - 17:00
場所
6号館609号室
講演者
塚本 真輝
講演者所属
京都大学
概要

単位区間[0,1]の無限直積[0,1]^Zをヒルベルト立方体と呼ぶ.この上のシフト作用に,与えられた力学系が埋め込めるかどうかを問う.この問題は40年以上前から研究されているが,この講演では特に,与えられた力学系が極小の場合に決定的な結果を話す.

1999年の論文でElon Lindenstraussは,極小な力学系の平均次元が1/36未満なら,ヒルベルト立方体上のシフトに埋め込めることを証明した.ここで出てきた1/36という数はいかにも人工的であり,Lindenstraussは同じ論文中で,埋め込みが存在するための最良の値を問題とした.

今回,Yonatan Gutman氏との共同研究で,この問題を次の形で解決した:
「極小力学系の平均次元が1/2未満なら,ヒルベルト立方体上のシフトに埋め込める.」
ここで,1/2という値はこれ以上改良できないことがわかっている.

非常に興味深いのは,証明の手法である.上記の問題自体は極めて抽象的な位相力学系であるが,証明にはフーリエ解析と複素関数論を本質的に用いる.したがって,位相力学系と古典解析との新しい関連性が生み出されたことになる.