Inverse problem on persistence diagrams

開催日時
2015/06/02 火 16:30 - 18:00
場所
6号館809号室
講演者
大林 一平
講演者所属
東北大学
概要

本講演ではパーシステントホモロジーの可視化手法の一つであるパーシステンス図の逆問題について考える。

ホモロジーは空間、幾何的データの穴や空洞の種類や個数を定式化し、空間の構造について研究するための重要な数学的概念である。パーシステントホモロジーはホモロジーの応用の一つであり、穴や空洞の個数だけでなく大きさのような情報も与える。このような情報のおかげでデータのノイズに対して頑健な計算結果を得られる。そしてパーシステントホモロジーの情報を二次元の図に表現したものがパーシステンス図である。パーシステントホモロジーは幾何データの重要な特徴量となりうるのではないかと考えられ、その計算法、および応用に関して様々な研究が進められている。例えばある物質の原子配置データから計算したパーシステンス図がその物質の何らかの機能性を表現している可能性が考えられる。本講演では幾何データとしてポイントクラウドデータ(ユークリッド空間上の有限個の点の集合)を考えることとする。

ポイントクラウドデータからパーシステンス図を計算するのが一般的なパーシステンス図の利用法であるが、ここではこの逆問題を考えたい。
すなわち与えられたパーシステンス図からそれを実現するようなポイントクラウドデータを構成する問題を考える。物質の原子配置データから計算したパーシステンス図がある機能性を表現しているならば、逆にパーシステンス図を似せた物質を設計することで、その機能性を実現できるかもしれない。一般的にはあるパーシステンス図を実現するようなポイントクラウドデータは一意ではなく、また存在しない可能性もある。応用上も一意ではない逆問題の解を何の制約もなしに構成しても利用価値は少ない。そのため何らかの制約の元に逆問題を考える必要がある。ここではその制約として、パーシステンス図のcontinuationを考えることにする。すなわち、目標のパーシステンス図と近いパーシステンス図を持つポイントクラウドデータから始めて、ポイントクラウドデータとパーシステンス図を連続的に変形することで目標のパーシステンス図を実現するデータを探す。本講演ではこのcontinuationを実現する数学的根拠、continuationが可能であるような条件、計算アルゴリズム、計算例などについて
議論する。