Stochastic stability of U(1)-extensions of expanding maps on the circle

開催日時
2015/01/30 金 14:00 - 17:00
場所
6号館609号室
講演者
中野 雄史
講演者所属
京都大学
概要

(非線形)拡大写像のU(1)-拡大と,その急冷ランダム摂動を考える.辻井正人氏は線形な拡大写像の懸垂半流の相関関数が指数的に減衰するための条件として横断性と呼ばれる概念を導入し,この条件が通有的になることを示した.一方,F. Faure氏は拡大写像のU(1)-拡大(これは部分拡大写像の最も簡単な自明でない例の1つとなる)に対して,横断性条件と同値である(と予想されていた)部分捕獲性という条件をフーリエ積分作用素の言葉によって導入し,相関関数の指数的減衰を準古典解析的な手法を用いて証明した.

今回の講演では,(1)部分捕獲性を”弱めた”急冷ランダム摂動に関する条件を導入し,部分捕獲性が成り立てばこの条件も成り立つこと,(2)この条件下では準古典ソボレフ空間上での転移作用素のスペクトル安定性が導かれることを示す.これらの結果から通有的な拡大写像のU(1)-拡大に関して,相関関数の減衰速度やSRB測度など様々な統計量の安定性が導かれる.(2)では,ランダムな転移作用素のLyapunov指数の安定性評価や,二重表象計算によるランダムな漸近展開公式の導出など多くのことが必要になるが,これらの解析はかなり技術的になるためあまり踏み込まず,双曲写像のコンパクト群による拡大(部分双曲力学系)の理解における超局所解析・準古典解析の重要性を概説することを目標とする.

また,時間が許せば(3)部分捕獲性と横断性条件の同値性,(4)(線形とは限らない)拡大写像に対する横断性条件の通有的についても考える.一般に拡大写像のU(1)-拡大の天井関数が定数関数にコホモロガスであるとき,その相関関数は減衰しないことが知られているので(辻井,Butterley-Eslami),(4)は線形の場合であっても自明な結果では全くなく,横断性条件の大偏差に関する慎重な議論が必要になる.

以上の結果の一部はJ. Wittsten氏,辻井正人氏との共同研究となっている.