乱流結晶の平衡統計力学

開催日時
2013/11/22 金 14:00 - 17:00
場所
6号館609号室
講演者
佐々 真一
講演者所属
京都大学大学院・理学研究科
概要

1982 年にD. Ruelle が “Do turbulent crystals exist?” という論文を発表し。 ”Turbulent crystal” (「乱流結晶」)と、 結晶や準結晶のようにブラッグピークを示す規則的相ではなく、 液体のように並進対称性を持っている相でもない。 つまり、並進対称性が破れているにも関わらず、 ブラックピークを示さない統計力学的相である。 Ruelleの提案以降しばらく検討されたが、 そのような相は、これまで自然現象で観測されたことはなく、 数値実験で示されたこともない。 乱流結晶を示す具体的な模型はあるのだろうか。 あったとして何故自然現象で観測されていないのだろうか。
その一方、全く独立した研究動機から、 理想的ガラス状態である「平衡ガラス」の理解が進展してきた。 特に、ランダムグラフ上の格子気体模型に対して、 平均場模型や現象論で期待されていた「平衡ガラス転移」を実際に示せるようになった。 そこで、有限の空間次元で「平衡ガラス転移」を見出すことが自然な次の課題であり、 現在いくつかの立場から研究がすすんでいる。
実は、この二つの独立に見える未解決問題は大きく関係している。 セミナーでは、まず、動機と考え方と方針と現在までの結果を先に紹介する。 その後、具体的な模型構成について問題点も含めて丁寧に議論する。 平衡統計力学における模型の構築と解析が主題であるが、 力学系の視点が本質的に重要である。
参考文献:
S. Sasa, Pure glass in finite dimensions, Phys. Rev. Lett. 109 165702 (2012)
A. C. D. van Enter, Aperiodicity in equilibrium systems: between order and disorder ArXiv 1310.0267[math-ph]