同じ BSD 不変量を共有する非同型な楕円曲線の組の無限族と、Tate--Shafarevich群の可視化(visibility)について

Date
2026/01/16 Fri 13:30 - 14:30
Room
3号館552号室
Speaker
志賀明日香
Affiliation
東北大学
Abstract

強い Birch--Swinnerton-Dyer 予想は、有理数体上の楕円曲線の$s=1$における$L$関数の主要係数が、Tate--Shafarevich 群や Tamagawa 数といった算術的データによって表されることを予言する。これらのデータをまとめて BSD 不変量と呼ぶ。Bell は、BSD 不変量を含む算術的データを共有する、非同型な $22$ 次元アーベル多様体の組を構成した。本講演では、BSD 不変量と Kodaira 記号を共有する非同型な楕円曲線のペアが無数に存在することを証明し、さらに非自明なTate--Shafarevich群を共有する組の存在を示す。
証明においては、2 次部分(2-primary part)に関する両方の Tate--Shafarevich 群を同時に自明化することがポイントとなる。さらに、非自明なTate--Shafarevich群を共有する組の存在証明においては、Agashe, Steinによる可視化(visibility)の理論を悪い還元を持つ素数に対しても拡張し、適用する。