2021年度ガロア祭 懸賞問題優秀者発表・出題者からの講評

新型コロナウィルスの影響により、2021年度のガロア祭も昨年と同様に
オンラインの開催となりました。
懸賞問題については、計10名の方からの解答がありました。
解答をお寄せいただいた皆様、本当にありがとうございました。

懸賞問題 優秀者発表

大賞: 西原拓生 さん

次点: 兒玉太陽 さん

出題者特別賞: 岸広登 さん

以上の方々には数学教室よりささやかですが賞品と賞状を差し上げたいと思います。
さらに、大賞の方には日本評論社から数学セミナー一年分が送られます。
賞品の受け渡しに方法等については対象者に後程連絡を差し上げますので、
楽しみにお待ちください。

出題者からのコメント・講評

問題1 (荒野悠輝):
$|x+y|^p$と$|x|^p+|y|^p$ を比較すればよいということには気づいていた方が多かったですが、
この2つには直接の大小がありません。
代わりに$|x+y|^p + |x-y|^p$と比較するという発想に気づくと、
見通しよく解けたと思います。

問題2 (筒井容平)
西原さんの解答が、とてもすっきりしていてよかったです。
連立方程式の非自明解の存在に帰着させる方法をとった方が多かったです。

問題3 (雪江明彦)
(1)だけでもできたら良かったのですが
((2)は理論的に証明するのは難しい,できますが)。

問題4 (雪江明彦)
強いて言えば田中君の解答がすっきりしていて良かったと思います。
ただこの問題は易しい問題だったので,できてあたりまえというか,
この問題が評価のポイントではないと思います。

問題5 (中安淳)
完全正答の人は一様分布定理を使っていてそれはそれでいいのですが、
その証明まで書いていたらもっと良かったと思います。

問題6 (森田陽介)
(2)では西原拓生さんが $f(m,n,k) \neq 0$ が成り立つための十分条件を、
兒玉太陽さんが必要条件を与えてくれました。
兒玉さんの(2)の解答は私には思いつかなかった方針で、とても感心しました。
ちなみに、問題の元ネタは「へやわけ」というパズルです。

問題7 (塩田隆比呂)
この問題は、Kronecker の稠密定理としてよく知られている結果を、少し一般化できないかという観点で出したもので、
(ii) の前半 ($m=1$ の場合) までなら初等的に ($\varepsilon$-$\delta$ は使うが Fourier 解析を使わずに)
解けることを確かめて出題しました。初等的にできるとは言え簡単ではなかったようで、解答者は2名だけでした。
島田さんは、Kronecker の稠密定理より強い結果である Weyl の一様分布定理 (証明には Fourier 解析を使う)
を考えれば、それの既知の一般化から (ii) の一般の $m$ の場合までが自然に得られることに気づいて、
詳しく紹介してくれた第1部と、一様分布でなく稠密性だけを考えることで
別のアプローチがあるのではないかと考えてくれた未完の第2部からなる長いレポートを書いてくれました。
もう1人の解答者の方は (i) だけを考えてくれましたが、残念ながら誤りがあり、証明できていませんでした。