環境変動に対する枯草菌の集団形態

Date
2020/11/17 Tue 16:30 - 18:00
Speaker
田崎 創平
Affiliation
京都大学 高等研究院 ヒト生物学高等研究拠点 / 理化学研究所 生命機能科学研究センター
Abstract

枯草菌は自然界に広く存在する細菌の一種であり,またモデル生物としてよく研究されてきた.枯草菌の細胞は環境に応じて多様な集団形態を示すことが知られている.また,適当な条件下では頑強なバイオフィルムを形成する.このような集団形態の多様性と頑健性を支えているのが,枯草菌の細胞ダイバーシティーである.枯草菌は環境条件や自身の細胞密度情報,コロニー内の部位などに応じて異なる細胞タイプを選択する.そして,各々の細胞タイプの形成する部分集団は,環境変化に応じて非常に細やかに活動を調節している.さらに,これらの集団間の分業によって,コロニー全体の頑健な成長を実現している.特に多様な細胞タイプからなるバイオフィルムの構造は,様々な機能を実現して長期生育を可能としている.本講演ではこのような枯草菌の集団形態形成について概説する.また,細胞集団の自己制御を記述するマルチレベルな数理モデルによって,非一様な細胞集団の形成機構を説明する.分子生物学の進歩と集団形態変化に関する我々の一連の実験および理論研究が,枯草菌のコロニーパターン形成の未解決問題にひとつの答えを与えることを披露したい.
本研究は,中山まどか氏(仙台高等専門学校),高木泉氏(東北大学 / 中国人民大学),東海林亙氏(東北大学)との共同研究に基づく.