Human Biology and Analysis of Life Bigdata

Date
2014/10/01 Wed 16:30 - 17:00
Room
RIMS110号室
Speaker
Fumihiko Matsuda
Affiliation
Graduate School of Medicine, Kyoto University
Abstract

20世紀の医学の目覚ましい発展で多くの病気が完治できるようになった一方で、長寿化による糖尿病や認知症に代表される慢性疾患が増加しきわめて深刻な社会問題を生んでおり、健康長寿を妨げる大きな原因となっている。慢性疾患は有病率が高く根治法がないため、予防が何よりも重要であるが、これまでの予防医学は集団の平均値を画一的に当てはめた方法が中心であった。しかしながらヒトはその遺伝的背景、環境、生活習慣において極めて多様な集団であり、同一の遺伝的背景や環境で行われるモデル動物による疾患研究の成果をそのままヒトに適用することはできない。
 慢性疾患の多くは、体内の微小な変化が時間とともに蓄積され緩徐に進行し、また一人ひとりの病型が異なるため、ヒトの誕生から死までの時間経過の中で、体質の多様性や老化といった正常の生命活動とともに病気を理解することが不可欠であり、そのためには、大きなヒト集団を長期にわたって観察し、生活習慣、環境曝露、行動などの多様な情報や生体試料を蓄積し、得られた生体試料の網羅的解析によりヒトの多様性を分子で語るような新たな学問、すなわち「ヒト生物学」を構築する必要がある。また、このようなアプローチから得られる尺度や次元の異なる膨大な時系列での生命情報(生命ライフログ)からヒトの疾患と関わる情報を高い確度で効率的に抽出するには、従来型の医学的アプローチでは不可能であり、数学、情報学、計算科学、経済学などが連携した学際的な取り組みが必須である。