正定値形式の幾何平均と作用素環の表現

Date
2014/10/08 Wed 15:00 - 16:00
Room
3号館110講演室
Speaker
山上 滋
Affiliation
名古屋大学・多元
Abstract

 いわゆる作用素の関数計算は、関数解析における基本的な道具の一つであり、
周知のように多くの教科書でも取り上げられている。一方で、ヒルベルト空間上の作用素については、付随した二次形式を通じて解析するというのもよく使われる手法であり、
とりわけ正作用素に対応する形で正定値形式が古くから調べられてきた。
PuszとWoronowicz は、1975年の論文において、この両者を融合する形で、
2つの正定値形式の相対的な作用素についての関数計算を二次形式的に記述する 方法を与えた。これは、有限次元の場合でもなお意味のある内容を含むもので、
実際、べき乗計算の場合は、量子状態のエントロピー的諸量の表示と密接に関係 しており、
Uhlmann により補間不等式に利用されるなどの応用がなされたのであるが、
その価値が十分に理解されたとは言いがたいのが現状である。
本講演では、このある意味忘れられた存在である Pusz-Woronowicz の理論、
とりわけ正定値形式の幾何平均を中心に、作用素環とその表現にまつわる問題と の関わりについて、あれこれ話してみたい。