氏名: 加藤 周 (かとう しゅう)
所属: 京都大学理学研究科 数学教室
身分: 教授 (代数グループ)
専門: 数学、特に幾何学的表現論
学位: 博士(数理科学) 東京大学 2003
主査: 松本久義
学位論文: Equivariant bundles on group completions
郵便宛先: 606-8502 京都府京都市左京区北白川追分町
京都大学理学部数学教室
E-mail:
自己紹介及び学生さんへのメッセージ
いくつかの論文の内容紹介(たまにupdateします)
- Equivariant vector bundles on group completions
- Published in the Journal f\"ur die reine und angewandte Mathematik 581 71--116 (2005) Article arXiv
- 滑らかなトーリック多様体上のトーラス同変ベクトル束の分類はKlyachkoにより1980年代になされたかのように言われることもありますが、実際には兼山により1970年代に行われました。いずれにせよ、この論文ではその非可換な一般化として簡約代数群のトロイダルコンパクト化上の同変なベクトル束のなす圏を線形代数のデータで記述しました。またその応用として特定のコンパクト化においてはベクトル束に対して標準的な境界への延長が存在するというKostantが提示した問題へこの場合に解答を与えました。簡約群のトロイダルコンパクト化は対称空間のトロイダルコンパクト化の最も基本的な場合で、特に対称空間上のベクトル束のコンパクト化への延長を記述するという方向の結果はこの論文が最初です。
- 学位論文です。この辺の話を使っていろいろやろうと思ったのですが、結局現在の所うまくいってません…
- An exotic Deligne-Langlands correspondence for symplectic groups
- Published in the Duke Mathematical Journal 148 no.2 305--371 (2009) Article arXiv errata
- Lusztigによる(affine) Hecke環版のDeligne-Langlands予想の変種をexotic冪零錐と呼ぶ多様体を導入することにより斜交群の場合に定式化しました。この構成により大雑把に言ってパラメタが小さな1の冪根に対応する場合を除いて古典型affine Hecke環の既約表現の分類を完成させました。これはad hocな構成なのですが、実際にはaffine Hecke環(というよりも簡約群一般)の通常表現はルート系の組み合わせ論に極めて強く依存することが知られているため、長さの違うルートを分離するというのは自然なアイデアであるとも言えます。いずれにせよこのexotic Deligne-Langlands対応はKazhdan-Lusztigにより確立された元々のaffine Hecke環版Deligne-Langlands対応よりも記述が簡素になりさらに適用範囲も実用上古典群の全ての場合をカバーする形に拡張されています。
- この論文のおかげでなんとか就職できました。
- Deformations of nilpotent cones and Springer correspondences
- Published in the American Journal of Mathematics 133 no.2 519--553 (2011) Article arXiv
- [2]の枠組みで導入されたexotic Springer対応を決定し、通常のSpringer対応との比較をしました。それによりJoseph多項式をいままで知られていなかった多くの場合に(スカラー倍を除いて)計算しました(概略)。特に、技術的には一度標数2に還元するとexotic冪零錐と普通のシンプレクティック群の冪零錐が(その軌道の構造をある程度保ったままで)繋げるということを証明しました。ここでexotic冪零錐の側では整数環上の族が群作用の軌道全てを保ったままなので自明なファイバー束であるようにみることができるため、この結果はある意味で通常の冪零錐からexotic冪零錐への退化の存在を言っていることになります。冪零軌道、より一般に錐的シンプレクティック特異点は特異点を保ったままでの変形を許さないいわゆる硬い対象です。変形と退化はある意味逆方向の操作なので(良い)変形はできないけれど(良い)退化はあるというのには数学的には何の矛盾もありませんが、考えさせられる結果だと思っています。
- 篠田健一、庄司俊明両先生の還暦祝いの献呈論文です。
- Tempered modules in exotic Deligne-Langlands correspondences
- Published in the Advances in Mathematics 226 no.2 1538--1590 (2011) Article arXiv
- [2]の枠組みで緩増加表現に対応するパラメタを決定しました。これはSlootenさんの学位論文で提示された枠組みに沿うものと言えますが、証明は[2]の枠組みを詳しく調べて幾何的に緩増加表現に対応しないパラメタを弾いてゆくというものになります。なお、[2]の枠組みのパラメタはWeyl群の既約表現を与えるため、この論文の記述は離散系列表現に対してある種の``minimal W-type"の概念を与えます。その導出アルゴリズムは純粋に組み合わせ論で記述されていて出力も綺麗ですが、通常のSpringer表現から出発するものとは確か少しずれたはずです。いずれにせよ、この論文の結果によりHeckman-OpdamによるLieb-McGuire系と呼ばれる可積分系の二乗可積分解の分類の理論を完成させました(概略)。
- Utah大学のDan Ciubotaru氏との共同研究です。
- A homological study of Green polynomials
- Published in the Annales Scientifiques de l'Ecole Normale Superieure 48 no. 5 1035--1074 (2015), Article arXiv
- Lie型有限群の指標を司る直交関数系であるGreen関数の直交関係式をホモロジー代数を用いて解釈しました。これによりGreen関数の新しい特徴づけを導きました。さらにそれを用いてBC型Green関数のパラメタに関する遷移公式を初めとするいくつかの性質を導きました。なお、そこで得られた新しい特徴づけ自体を抽象化した概念であるKostka系とその基本的性質に関しては一般の複素鏡映群で動くように設計しておきました。
- この話を複素鏡映群の設定で準備しておいた甲斐があり、複素鏡映群G(l,1,m)のKostka多項式について庄司俊明氏が2004年に提出した予想を満足ゆく形で解決できました。
- Loop structure on equivariant K-theory of semi-infinite flag manifolds
- Published in the Annals of Mathematics 202 no. 3 1001--1075 (2025) Article arXiv
- (単連結)単純代数群に付随するアフィン・グラスマン多様体の(コ)ホモロジー群と同じく付随する(有限次元)旗多様体の量子コホモロジーに関係があるという事実はPetersonにより見出されました。また、保型形式の研究や(局所)幾何学的Langlands対応の研究はアフィン・グラスマン多様体の幾何学と半無限旗多様体の幾何学が基本的に等価であることを示唆していました。この論文ではこれらを結んでアフィン・グラスマン多様体および半無限旗多様体の"(同変)幾何学"と旗多様体の"(同変)量子幾何学"の3つは数値的には自然に等価であるという類の主張を定式化して証明しました。特にその主定理は旗多様体の量子K群の構造を計算するふたつの具体的な方法を与え、そのうちの片方がLam-Li-Mihalcea-Shimozonoによる予想の解決となっています。主定理の証明は(元々の)Peterson同型のLam-Shimozonoによる証明とは本質的に異なり、詳細な構造定数の公式は使用しません(その類の"公式"は論理的にはそれまで全て予想でした)。なお、旗多様体の量子K群のSchubert類同士の積がSchubert類の有限和になるといういわゆる有限性予想の解決もこの論文によります。
- この流れで部分旗多様体の量子K群の間のいわゆる関手性も示しました。このことは量子コホモロジーの場合はLam-Shimozonoに書いてあるし証明は非常に自然なのでそんなものかなと思ったのですが、関係者の人たちからはすごくびっくりしたという旨を伝えられて意外に感じたことを割と鮮明に覚えています。
- Frobenius splitting of Schubert varieties of semi-infinite flag manifolds
- Published in the Forum of Mathematics, Pi 9 e5 56pp (2021) Article arXiv
- 半無限旗多様体とその放物類似の形式モデルの理論を(1/2を添加した整数環上で)展開しました。それにより半無限旗多様体を点集合として実現する代数多様体の中で表現論的に構成したものが標数によらず最も自然なものであること、そしてその自然さは表現論的な性質が担保していることを明らかにしました(後者の表現論的な性質も一般にはこの論文で証明しました)。このように元々別種の性質が繋がってひとつの構造をなすことは実はかなり広い設定において正しいことなのですが、明示的にそれを活用したのはこの論文が初めてだと思います。これらの性質はどちらも抽象的なものですので、それがさまざまな構造を拘束してゆき最終的に数値的帰結に至る様子はそれなりに興味深いと思っています。
- Higher level BGG reciprocity for current algebras
- Accepted for publication in the Mathematische Annalen Article arXiv
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アフィン・リー代数の上三角部分を古典型リー代数を含むように少し膨らませた代数を(untwisted/twisted) current代数と呼ぶ流儀があります。この様な代数の表現論は半単純である単純リー代数の表現論を適切に非半単純にしたものになっています。そのような状況のもとでホモロジー代数的な意味での直交性を持つ自然な加群の族が2010年代にBennett, Berenstein, Chari, Fourier, Ion, Khoroshkihin, Loktev, Manning, Senesiらにより整備されました。それと別の解釈として、twisted current代数に限ると彼らの加群はレベル1の有限次元Demazure加群になっているということがFourier-Littelmannにより示されています。この論文では後者の解釈を一般化して任意の正整数ℓに対し、レベルℓの有限次元Demazure加群たちとレベル(ℓ-1)の無限次元Demazure加群たちが直交性を持つことを示しました。無限次元Demazure加群は可積分最高ウェイト表現の制限を含むため、このことは直交多項式の理論が自然にテータ級数のような対象を含む様な形に延長されることを意味します。
- この話は半単純リー代数のいわゆるvan der Kallen双対性のaffine類似ですが、その適切な定式化自体この論文で初出だと思います。
- A geometric realization of Catalan functions
- arXiv
- (一般線形群に付随する)旗多様体の余接束上の数値的に有効な直線束の大域切断がHall-Littlewood多項式を記述することはBrylinskiおよびBroerにより1990年ごろから知られていました。それを一般化する試みの中で2000年ごろShimozono-Weyman予想として知られる命題を始めとする一連の研究の流れが生まれ、Chenの学位論文、Blasiak-Morse-Pun (や他の方々)の研究を経て数値的部分に関しては満足のゆくものなりました。特に現在はそこで出現するCatalan多項式と呼ばれる多項式たちが非常に良いクラスであることが認識されています。この論文では上の一連の研究で全く手付かず(なだけではなくより一般化された形)で残った「消滅予想」と呼ばれる部分(数値的部分と実際の幾何学を結びつけるステップ)をXΨで表す多様体を導入しその性質の解析へと帰着することで解決しました。ひとことで言うとXΨはそのBorel-Weil理論がCatalan多項式を実現するような多様体です。
- 多様体XΨは当初思ったよりも良いもののように思います。例えば単位区間グラフの彩色対称関数はこの多様体のコホモロジーで実現されます。
- Categorification of k-Schur functions and refined Macdonald positivity
- arXiv
- LaPointe-Lascoux-Morseは当時その解決へと向けた努力が佳境を迎えていたいわゆるMacdonald正値性予想をより深く理解するため、Macdonald多項式を正値に展開するより最適な関数を探すという文脈で2003年にk-Schur多項式と呼ばれる対称多項式の族を導入しました。この論文ではKostka多項式を圏化した[5]の枠組みに適切なホモロジー的直交性条件を課すことで得られる圏の"既約加群"の指標がk-Schur多項式であるというChen-Haimanの予想をm \le 2kの範囲で示しました。このことは適切なk-Schur関数によるMacdonald多項式の展開が正値になることを意味するため、元々LaPointe-Lascoux-Morseが目指していた枠組を成立理由を含めた形でこの場合に確立したことになります。
- 議論に抜けがありちょっと最終予想の証明に条件がついてしまいました。
論文リストはこちら
最終更新日:2026年9月16日 by
