2010年度 集中講義の予定(伊藤担当分)
※ 2010年度の集中講義(伊藤担当分)の予定です.詳細は数学教室のホームページ(週間予定表)
をご確認ください.
※ 談話会については,談話会のページ(数理研)もご確認ください.
非可換ルビン‐テイト理論(吉田輝義先生) 集中講義・談話会
集中講義の予定
- 日程
- 6月21日(月)〜25日(金)
- 講師
- 吉田輝義(ケンブリッジ大学)
- 題目
- 『非可換ルビン‐テイト理論』
- 非可換ルビン‐テイト理論、局所ラングランズ対応の幾何学的構成について解説する。
- 授業計画と内容
- ガロア表現のラングランズ対応の理論の中でもっとも完成した姿をしている部分の一つである、局所ラングランズ対応の幾何学的構成について解説する。これはルビン‐テイト理論(局所類体論の幾何学的構成,虚数乗法論の局所体類似)の一般化にあたり、「局所志村多様体」(ラポポート‐ツィンク空間)のエタールコホモロジーの理論の基本的なケースでもあるが、まだ未解決の問題が多い(とくに、局所体上のみの議論での証明が得られていない)。講義では、ルビン‐テイト理論の解説から始め、最近の進展の様子や、今後の課題まで紹介したい。
- 教室
- 京都大学理学研究科数学教室 理学部3号館127大会議室
- 時間割(予定)
- 6月21日(月) 15:00〜17:00
- 6月22日(火) 15:00〜17:00
- 6月23日(水) 10:00〜12:00 (談話会 16:30〜17:30)
- 6月24日(木) 15:00〜17:00
- 6月25日(金) 10:00〜12:00
談話会の予定
- 日時
- 6月23日(水) 16:30〜17:30
- 教室
- 京都大学理学研究科数学教室 理学部3号館127大会議室
- 講演者
- 吉田輝義 (Teruyoshi Yoshida) (University of Cambridge)
- タイトル
- 『非可換局所類体論の幾何学的実現』
- (Geometric realization of local Langlands correspondence)
- 要旨
- Gaussによるレムニスケートの五等分は虚数乗法論の一例であった.高木貞治は楕円函数の虚数乗法論を完成させたのち,その「対応」が必ずしも虚数乗法論という幾何学的実現をもたない形で一般の代数体で成り立つこと(類体論)を示した(1920年代).類体論は各素数pに対するp進体上の理論(局所類体論)に分解されたが(1930年代),局所類体論はつねに幾何学的実現をもつことをLubin-Tateが示した(1960年代).非可換類体論(Langlands対応)も,特殊な場合の幾何学的実現(志村多様体論)の発見が先行し,必ずしも志村多様体に現れない場合も一般の代数体上で予想が定式化された(1970年代).これも局所理論に分解し,局所Langlands対応はつねに幾何学的実現(非可換Lubin-Tate理論)をもつ.局所Langlands対応はこの幾何学な形で,志村多様体を用いて示された(1990年代)が,いまだ局所体上の議論のみでは証明できない.これらの流れを概観する.
この非可換Lubin-Tate理論は,Lubin-Tate空間またはp進上半空間と呼ばれる「p進対称空間」のコホモロジー群に標準的に実現される.これは代数的整数論とGL(n)の表現論をつなぐLanglands対応の神秘的な部分がもっとも直接的に現れた幾何学的構造ともいえるが,まだ解明されていないことが多い.馴分岐という簡単な場合に,Deligne-Lusztig多様体・アフィンHecke環の作用などを通して局所Langlands対応の仕組みが見える様子を解説する.暴分岐の場合の構造もようやく解明され始めている.
岩澤理論とゼータの化身(加藤和也先生) 集中講義・談話会
集中講義の予定
- 日程
- 6月28日(月)〜7月2日(金)
- 講師
- 加藤和也(シカゴ大学)
- 題目
- 『岩澤理論とゼータの化身』
- ゼータ関数という解析的対象とイデアル類群などの代数的数論的な対象の間に存在する神秘的な理論である岩澤理論と、岩澤理論を研究する上で大切なゼータの化身について講義を行う。
- 授業計画と内容
- 岩澤理論はゼータ関数という解析的な対象と、イデアル類群や楕円曲線の有理点やセルマー群という、代数的数論的な対象の間に存在する、神秘的な関係を考察するものである。これについて、ゼータ関数が、代数的数論的な対象に化身をする現象があり、その現象を観察することが大切である。リーマンゼータ関数は円単数という代数的な対象に化身をし、楕円曲線や保型形式のゼータ関数は、Beilinson element という代数的な対象に化身する。日本の昔話で、狐や鶴が人間に化身するのに似ており、その類似をたどることも大切である。これについて講義する。
- 教室
- 京都大学理学研究科数学教室 理学部3号館110教室
- 時間割(予定)
- 6月28日(月) 15:00〜17:00
- 6月29日(火) 15:00〜17:00
- 6月30日(水) 10:00〜12:00 (談話会 16:30〜17:30)
- 7月1日(木) 15:00〜17:00
- 7月2日(金) 10:00〜12:00
談話会の予定
- 日時
- 6月30日(水) 16:30〜17:30
- 教室
- 京都大学理学研究科数学教室 理学部3号館110教室
- 講演者
- 加藤和也 (Kazuya Kato) (University of Chicago)
- タイトル
- 『保型形式の岩澤理論とゼータの化身』
- (Iwasawa theory for modular forms and incarnation of Zeta)
- 要旨
- 古典的な岩澤理論では,円単数という,ゼータ関数の化身が大活躍する.保型形式の岩澤理論では,Beilinson element というゼータ関数の化身が大活躍するのでは,と講演者はかつて思い,円単数が岩澤理論で用いられるように, Beilinson element が保型形式の岩澤理論でさかんに用いられる日が来るのでは,と思った.そして,日本の昔話に鶴の化身や蛇の化身が現れるから,岩澤理論で日本の昔話が活躍する日が来るのではとも思った.この最後の予測は必ずしも現実化しているとは言えないようである.しかし,Beilinson element が多くの人によって岩澤理論に用いられるようになっている.そのことを紹介したい.
-
最終更新日: 2010年6月21日(月)