講演アブストラクト

プログラム

田中 雄一郎
タイトル:コンパクトリー群の対する一般化カルタン分解について
コンパクトリー群Gとその2つのレビ部分群L,Hからなる3つ組(G,L,H)に対し,
一般化カルタン分解というものを考える. 1つの“一般化カルタン分解”から
3つの“一般旗多様体への可視的作用”が得られ, そこからさらに3つの
“無重複定理”が従う. 講演では,Gを単純としたときの一般化カルタン分解可能な
3つ組(G,L,H)の分類についてお話したい.

石井 基裕
タイトル:一般Kac-Moody Lie環の表現のパス模型とその応用
Kac--Moody Lie環の可積分表現の結晶基底の一つの実現として,
Littelmannのパス模型が知られている. この理論を一般Kac--Moody Lie環の場合に
拡張する試みが, 最近Joseph--Lamprouによってなされた.
我々は彼らが導入したパス模型を利用し, 一般Kac--Moody Lie環に関する多くの問題を,
通常のKac--Moody Lie環の議論に帰着させる方法を示した.
その応用として, 一般Kac--Moody Lie環の可積分表現のテンソル積の分解則や,
Levi部分代数への制限に関する分岐則の記述, 更にDemazureクリスタルの記述と
その指標公式が得られることについて述べたい.

市野 篤史
タイトル:形式次数とテータ対応
局所テータ対応とは, (p進体上の)古典群の(複素数係数)表現から,
別の古典群の表現を, ある種の分岐則を用いて構成する方法である.
この構成の下での, 表現の解析的不変量の振る舞いについて述べ,
これを表現の分類(局所Langlands対応)を用いて, 数論的に解釈する.
この講演は, Wee Teck Gan氏との共同研究に基づく.

辰馬 伸彦
タイトル:淡中型双対定理と群位相
位相群に対して, 淡中型弱双対定理を考える時, 証明に現れる 
”再表現(birepresentation)”の各成分作用素の種類を変える事により,
定理が成立する群の位相が変わってくる.
双対定理が成立するための必要十分条件とともに, これらの関係について解説する.

落合 啓之
タイトル:対称対の有限型二重旗多様体
簡約代数群 G の部分旗多様体と, その対称部分群 K の部分旗多様体の直積を
対称対の2重旗多様体と呼ぶことにする.
2重旗多様体への K の対角的な作用が有限個の軌道を持つのはどんな部分旗多様体の組のときか,
また, その場合に軌道分解はどうなるか, という問題を考える.
この講演は, 西山享, 近藤健介の講演へと引き続く, 概説的な部分を担当する.
この講演の内容は, 上記2名ならびに, 谷口健二, Xuhua He との共同研究の内容に基づく.

西山 享
タイトル:sphericalな群作用と多重旗多様体
簡約代数群 G の部分旗多様体とその対称部分群 K の部分旗多様体の直積を考える.
これを対称対の二重旗多様体と呼ぶ. 二重旗多様体には対称部分群 K が対角的に作用しているが,
K 軌道の有限性は, 例えば旗多様体 G/B 上の K 軌道の有限性 (KGB理論) の一般化にあたり,
幾何学的に見ても表現論的に見ても興味深い問題であると思われる.
本講演では, G または K の球作用 (spherical action) と
二重旗多様体上の K 軌道の有限性が密接に関係していることを報告する.

木村 嘉之
タイトル:次数付き箙多様体と量子クラスター代数
フランス パリ第7大学のFan Qin氏との共同研究に基づく.
クラスター代数の正値性予想とは, 任意のクラスターによるローラン展開に関して
正値性を持つような基底の構成の存在に関わる予想である.
中島啓氏によるbipartitequiverに付随する(量子)クラスター代数のモノイダル圏論化の手法に従い,
acyclic quiverに付随する次数付き(アフィン)箙多様体上の同変偏屈層の量子Grothendieck群を
制限関手による量子トーラスへの埋込($(t,q)$-指標)を用いて解析し,
クラスター代数の正値性予想を解決した.
クラスター代数のモノイダル圏論化の中心である,
(量子)クラスター単項式が``双対標準基底''に含まれることの
Fourier-Deligne変換と一般(量子)クラスター指標に基づいた証明を紹介したい.

山崎 貴史
タイトル:基本相対不変式の次数による対称錐の特徴付け
等質開凸錐にはT-algebra, N-algebraといった代数構造が1対1に対応している.
これらの代数構造と, そこから生成されるm-skeletonという図形は,
等質開凸錐の分類や行列の集合としての実現に役立つ.
本講演では, これらの議論を発展させて, 基本相対不変式の次数によって
対称錐が特徴付けられることを述べる.
また, 一般の等質開凸錐について, 基本相対不変式の次数を決定するための議論について触れる.

近藤 健介
タイトル:放物型部分群の交わりと有限型二重旗多様体
Gを複素数体上の連結簡約代数群, K=G^θを包含的自己同型
θ∈Aut(G)の固定部分群とし, その対称対(G,K)を考える.
西山, 谷口(青山学院大学), 落合(九州大学)との共同研究において,
(G,K)がエルミート型のときにはGの二つの放物型部分群P_1, P_2があって
それらの交わりがKの放物型部分群となるものが存在する.
一方, (G,K)が非エルミート型のときには存在しないことが確かめられた.
本講演ではこの結果について解説する.

大島 利雄・廣惠一希
タイトル:代数的線形常微分方程式とKac-Moody root系
Katzのミドルコンボリューション理論や, Deligne-Simpson問題
(局所モノドロミーから大域モノドロミーを構成する逆問題)の研究から,
Fuchs型線形常微分方程式とKac-Moodyroot系との関係が
W. Crawley-Boeveyによって発見された.
さらに特異点間の接続問題, 普遍方程式の構成や方程式の既約性,
そしてモノドロミー保存変形におけるアファインWeyl群対象性等の
複素領域の微分方程式論の基本的な問題がroot系を用いて
統一的に理解されるようになった.
本講演ではこれらの結果の概説と共に不確定特異点を許す場合への拡張として,
代数的線形微分方程式の変換理論と一般化Riemannスキーム, 特異点の合流,
およびこれらのroot糸での解釈と分類, 高解パンルヴェ方程式のWeyl群対称性や
分類問題との関係などについて解説する.

阿部 紀行
タイトル:分裂型p進簡約群の法p表現の分類について
p進簡約群の, 標数pの体上の表現を法p表現と呼ぶ. 群が分裂型である場合に,
法p既約認容表現を超尖点形式の言葉を用いて分類する定理を紹介する.

岡田 聡一
タイトル:Spinor representations ans symmetric functions
環 Z[e]/(e2-1) に係数をもつ対称関数の族を導入し,
Pin 群 Pin_n(直交群 O_n の 2 重被覆群)の表現論に応用する.
Pin_n の既約表現のテンソル積の既約分解, Pin_{m+n} の既約表現を
O_m × O_n に対応する部分群に制限したときの既約分解を
組合せ論的に記述する方法を与える.