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 永田雅宜先生は、昨年初秋からの闘病の甲斐もなく、本年8月27日に逝去されました。

 永田先生は可換環論と代数幾何学のリーダーとして数々の業績を挙げ、世界を驚かせてきました。今日Nagata ringと呼ばれる擬幾何環についての精力的な研究は「ネター環の密林の中で安全に探索できる領域を見つけ出し」、また「幾多の病理学的例により、その領域の境界を指し示し」(L. Illusie) ました。局所環のヘンゼル化理論の創始と完成は殆ど全て永田先生によるものであり、後のétale射、代数空間理論の基礎になるものです。正則局所環が素元分解環であることの決着に永田先生が中心的役割を果たされたこともよく知られています。

 デデキント環上の代数幾何学についての一連の業績は、後のスキーム理論など代数幾何学の基礎付けに計り知れない影響を与えました。全ての代数多様体は完備代数多様体の開集合であるという、代数幾何学になくてはならない定理は、射影的でない非特異3次元完備代数多様体と正規完備代数曲面の例の構成と相俟って、完備代数多様体の位置づけを明確にしたものです。

 可換環論と代数幾何学を深く洞察した永田先生の研究は、不変式論の世界を塗り替えてしまったといっても過言ではないでしょう。代数群の多項式環への有理作用について、その不変式全体は有限生成代数になるであろうというHilbertの第14問題に対する反例は、代数幾何学と不変式の専門家を震撼させるとともに、この分野が想像以上に複雑かつ豊かなものであることを示しました。正標数の場合でも簡約可能群が不変式の有限性についての十分条件であることを導くMumford予想の重要性を早くから指摘して、この予想の肯定的解決が主張する不変式論における結果とその代数幾何学への応用を明らかにしました。

 学術コミュニティにおいては日本数学会の理事、学術会議会員、国際数学連合の副会長などの要職を務められ、数学の発展だけでなく、学界における数学の位置づけを向上させることに意を尽くされたこともよく知られています。

 永田先生は京都大学で理学部選出評議員として大学の管理・運営に多大の貢献をされ、「入学者選抜方法研究委員会」で大学入学試験について先生の高い見識を発揮されました。入学試験における数学者の役割の重要性を早くから主張したのも永田先生です。京都大学退職後は岡山理科大学で学生の指導に当たり、その後は兵庫県八千代町で子供たちに数の面白さ、自分で考えることの重要性などを伝え、ご自身の教育についての夢を追われたと伺っています。

 永田先生の御遺徳、御遺業を偲び、皆様と語り合う「お別れ会」を下記のように企画いたしました。奥様の永田千種様も御参加いただけると伺っています。連休の中日ですが、万障お繰り合わせの上、御参加いただくよう御願い申し上げます。

 小田忠雄
 宮西正宜
 丸山正樹
 森 重文
 森脇 淳
 
 

永田雅宜先生を偲ぶ「お別れ会」

日時 平成20年11月23日(日)

午後1時より、2時間程度

場所 京都大学理学部6号館 401号室

(京都大学理学部の今出川門を入って左側2棟目)
(会場へのアクセスにつきましては、こちらをご覧ください。)

なお、当日は平服にて御参加いただきますよう、御願い申し上げます。

追伸、永田先生は交際範囲の広い方でした。私達では把握できず御案内できない方が多々いらっしゃることを懼れています。御関係の方に「お別れ会」についてお知らせいただくよう御願い申し上げます。

なお、ご家族へのメッセージがございましたら、farewellnagata@math.kyoto-u.ac.jpまでお願いいたします。