研究の展開--例として 数論と代数幾何の融合
加藤和也教授(事業推進メンバー)
素数の夢・幾何の夢
素数 ごとに、小さな有限の、数の国がある、それは、p でわったあまりの世界、0,
1, 2, ..., と行って p まで行ったら0 に戻る世界。小さい世界ながら、この世界で
は4則演算ができる。19世紀のはじめ、天才ガロワは、このような有限の数の世界
を考察した。50年ほど前、この有限の世界の幾何学と、複素数の世界の幾何学の間
を結ぶ、ヴェイユ予想という、代数学と幾何学の統合を夢見る壮大で神秘的な予想が
生まれ、その予想が20年以上かかって解決されるまでに、数学の世界に大変動が生
じた。その劇的な大変動をふりかえりつつ、数学のふしぎ、夢について述べたい。こ
の有限の世界のそういうふしぎを理解することから、今暗号理論や、符号理論が生ま
れ、社会に応用されていることにもふれたい。こうしたことを歌の形で唱えてみた
い。
「素数の歌はとんからり。耳をすませば聞こえます。楽しい歌が聞こえます。素
数の歌はちんからり。声を合わせて歌います。素数の国の愛の歌。素数の歌はぽんぽ
ろり。素数は夢を見ています。あしたの夢を歌います。」
幾何の世界と素数の世界
方程式の表わす図形を実数と複素数の世界で描いてみましょう。
複素数での図形は実際は無限の彼方まで拡がっていますが、
ここではそれを縮めて描きました。x^n+y^n=1 なら、
複素数での図形は、(n-1)(n-2)/2 個の穴をもつ浮き袋の姿になります。
一方、素数 p でわった余りの世界 {0,1,...,p-1} では、
x^n+y^n=1 などの方程式の解の個数を数えると、だいたい
p ± {複素数の世界での穴の個数} × 2√p
くらいになるなどのことから、複素数での図形の姿が浮かびあがって
くるのです。このように、幾何の世界と素数の世界は深い関係を持ち、
かつ深い謎を持っているのです。そして、それが暗号理論や符号理論
など数学の社会への応用も生みます。
京都大学
大学院理学研究科
数学教室|
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