Potential geometry in the moduli of complex dynamics

Date
2018/01/10 Wed 16:30 - 17:30
Room
RIMS110号室
Speaker
Yusuke Okuyama
Affiliation
Kyoto Institute of Technology
Abstract

(Slides will be in English).

正規化された(複素一変数)二次多項式族P_c(z)=z^2+c(cは複素数)の
「パラメーター空間としての複素数平面」の自然な一般化として、
1より大きい整数dに対し、(複素一変数の)d次有理関数(が合成を積として
生成する一元生成半群)のメビウス共役類の集まり、言い換えれば
d次有理関数(の反復合成)がなす複素射影直線上の「力学系のモヂュライ空間」
(M_dと書く)が、2d-2次元の複素解析的軌道体として得られますが、
M_dには種々の「力学系的に意味のある」複素超曲面が生息しています。
例えば自然数nに対し、このモヂュライ空間M_dの元である力学系のうち、
(全部で2d-2個の)分岐点の少なくとも一つがn周期点となるものの集まりは、
M_dの(既約とは限らない)複素超曲面(および積分カレント)を定めます。
このようなM_d内の「力学系的に意味のある」複素超曲面たちの交叉の様子は、
d=2の場合(Kiwi-Rees)を除いて最近まであまり分かっていませんでした。
一方、モヂュライ空間M_dにおいて、力学系(のジュリア集合への制限)が
摂動に対し安定な部分(J安定な部分)は稠密な開部分集合をなし
(Ma\~n\'e-Sad-Sullivan, Lyubich)、その補集合であるJ不安定な部分
(分岐集合)は力学系の2d-2個の分岐点たちがM_d上に各々定める「脱出度」と
呼ばれるヘルダー連続関数たちのM_d上での複素ラプラシアンの総和(分岐カレント)
の支えとして特徴付けられ(DeMarco)、さらにこの分岐カレントの
1乗, 2乗, ...,2d-2乗(高次分岐カレント)はすべて非自明であり、
従ってそれらの支えたち(高次分岐集合たち)が分岐集合を
フィルトレーションすることが知られています(Bassanelli-Berteloot)。
本講演ではAmiens大学のGabriel Vigny, Thomas Gauthier両先生、
Northwestern大学のLaura DeMarco先生らとの共同研究の中から、
力学系のモヂュライ空間M_dにおける乗法因子多項式の定める因子たちの交叉と
上記高次分岐カレントのポテンシャル幾何的研究(定量的等分布、数え上げ、体積計算、
退化など)を、2次多項式族などの具体例をふまえながらご紹介したいと思います。