京都大学応用数学セミナー(KUAMS)

 

過去のセミナー記録:2018年

 

 

第48回:2018年1月9日(火)16:30−18:00

矢崎 成俊(明治大学 理工学部)
「曲線追跡法について」

Yazaki_san概要: 主として時間発展する平面曲線を追跡する数値計算法について紹介する. 一口に平面曲線といっても,閉じているか開いているか,自己交差しているか否か, 開いている場合には端点における条件はどのようなものであるのか, などによって,その動きはさまざまとなる.本講演の目的は,さまざまな 曲線の運動に対する統一的なスキームを提案することである. 時間が許せば,空間曲線を追跡する方法についても言及したい.

 

第49回:2018年2月22日(木)10:30−12:00

Elena Luca(カリフォルニア大学サンディエゴ校)
「Complex variable techniques for Stokes flows: new transform methods and applications」

Dr_Elena_Louca概要: Motivated by modelling challenges arising in microfluidics and low-Reynolds-number swimming, we present a new transform approach for solving biharmonic boundary value problems in two-dimensional polygonal and circular domains and show its implementation in various Stokes flow problems. The method is an extension of earlier work by Crowdy & Fokas [Proc. Roy. Soc. A, 460, (2004)] and provides a unified general approach to finding quasi-analytical solutions to a wide range of problems in low-Reynolds-number hydrodynamics and plane elasticity. The new approach leads to fast and accurate schemes for evaluation of the solutions. [Joint work with Darren Crowdy (Imperial).]

 

第50回:2018年3月13日(火)10:30−12:00

Patrick Farrell(オックスフォード大学,オリオル・カレッジ)
「Computing disconnected solution branches of nonlinear partial differential equations」

概要: Computing the solutions of a nonlinear equation as a parameter is varied is a central task in applied mathematics and engineering. In this talk I will present a new algorithm, deflated continuation, for this task.
Deflated continuation has two main advantages over previous approaches. First, it is capable of computing disconnected bifurcation diagrams; previous algorithms only aimed to compute that part of the bifurcation diagram continuously connected to the initial data. Second, its implementation is extremely simple: it only requires a minor modification to any existing Newton-based solver, and does not require solving any new auxiliary problems. As a consequence, it can scale to very large discretisations if a good preconditioner is available.
We will demonstrate the utility of the new algorithm by using it to discover previously unknown solutions to several problems of physical interest.

 

第51回:2018年4月17日(火)16:00−17:30

榊原 航也(京都大学)
「基本解近似解法による点渦力学系の数値解析」

Koya_Sakakibara概要: 2次元非圧縮非粘性流体の挙動を解析する上で,Lagrange保存量である渦度を調べることが大きな役割を果たす. 渦をそのままの形ではなく,有限個の点渦の重ね合わせとして近似するのが,点渦力学系である. 点渦力学系は有限次元力学系であり,それ故,今までに様々な数学的知見が蓄えられてきた. 平面内での点渦力学系の研究の歴史は長く,その様相はだいぶ分かってきたと言っても過言ではないと思われる.
そこで,次に考えたいのは,「曲がった空間」の上での点渦力学系の性質を調べることである. 空間が曲がることで,その解析は格段に難しくなることは想像に難くないと思われる. 実際,今までに得られている結果は,比較的シンプルなトポロジー(球面,回転対称な曲面,トーラス等)を持つ場合であり,一般の曲面上での解析はほとんど行われていない. 本講演では,曲面上の流れの統一的な理解への第一歩として,極小曲面上の点渦力学系を考察する.
イメージとしては,空間内にいくつかの閉曲線が配置されており,その間に張られる極小曲面が舞台となる. この問題設定は,懸垂面(シャボン膜)に代表されるように,極小曲面は我々の身近によく見受けられるにもかかわらず,その上での流れの理解が進んでいないことに起因している. 本講演での1つの主張は,基本解近似解法を用いた数値解析が,曲面上の流れを理解するために有力な手法となりうることである. 基本解近似解法は,偏微分方程式に対するメッシュフリー解法であり,今回扱う問題と非常に相性が良い. このことを理解していただくためにも,基本解近似解法について簡単なレビューを行う予定である.
本講演の内容は,清水雄貴氏(京都大学)との共同研究に基づく.


備考: 本セミナーはiTHEMS・京大—理研数理連携研究室と共同で開催されます.
本応用数学セミナーに先立って, 次のiTHEMS/データ同化セミナーの講演会が行われます:

* 講演者:高玉 孝平 (RIKEN iTHES/iTHEMS, RIKEN AICS)
* タイトル:「Including an ocean mixing model in atmospheric data assimilation: a case of Typhoon Soudelor 2015」
* 時間:15:00〜15 :30
* 場所:京都大学北部総合教育研究棟 1階 益川ホール

本応用数学セミナーの会場と時間がいつもと異なることにご注意ください.場所は上記のiTHEMS/データ同化セミナーと同じく,京都大学北部総合教育研究棟 1階 益川ホールです (キャンパスマップの13番の建物).

 

第52回:2018年5月29日(火)16:30−18:00

寺前 順之介(京都大学 情報学研究科)
「大脳皮質の局所ネットワーク構造とダイナミクス」

Junnosuke_Teramae概要: 大脳皮質は,認知・判断・推定などの高次機能と呼ばれる機能を担当する脳の主要な部位であり,約百億の神経細胞からなる巨大なネットワークである.そのネットワークは,局所的にはほぼランダムネットワークに見えるものの,近年,実験技術の進歩によって,結合強度の強い不均一性やクラスター構造,また結合強度の様々な相関などを含む,非ランダムな特徴を有することが明らかになり始めた.しかし大脳皮質局所ネットワークに見られるそれらの特徴が,脳のどんな機能とどのように関連しているのかは未解明に残されていた.本発表では,まず大脳皮質のネットワークが持つ特性とそこで見られる神経活動について最新の知見を含めて紹介し,大脳皮質の特徴的なネットワーク構造が,神経系への入力信号に含まれるノイズに対するある種の安定性への要求の結果として説明できることを数値的に示す.さらにそのネットワーク上で,神経細胞間での自発的なスパイク発火活動が安定して生成され維持されるメカニズムについても紹介する.

 

第53回:2018年6月19日(火)16:30−18:00

平岡 裕章(京都大学高等研究院)
「トポロジカルデータ解析とパーシステントホモロジー」

Yasuaki Hiraoka概要: Topological data analysis is an emerging concept in applied mathematics in which we characterize “shape of data” using topological methods. In particular, the persistent homology and its persistence diagrams are nowadays applied to a wide variety of scientific and engineering problems including materials science, life science and social networks etc. In my talk, I will give a survey of these concepts both from mathematics and applications. If time is allowed, I will show several future challenges which deepen the mathematical understandings and possible applications.

 

第54回:2018年7月24日(火)16:30−18:00

宮武 勇登(大阪大学)
「最適化問題に対する離散勾配法」

概要: 離散勾配法とは主にHamilton系を対象として研究されてきた構造保存数値解法の一種である.勾配系に対して離散勾配法を適用すると,エネルギー関数の単調減少性が保証される算法が得られることから,近年,最適化問題に対する数値解法としての可能性が盛んに議論されている.本講演では,まず,様々な研究者による近年の研究をレビューする.その後,線形方程式を最適化問題とみなして離散勾配法を適用すると,代表的な定常反復法であるSOR法が導出できることを示し,新しい導出法を与える意義について議論する.

 

第55回:2018年9月14日(金)15:00−16:30

Uriel Frisch(Laboratoire Lagrange, Observatoire and Universite Cote d'Azur, Nice)
「The mathematical and numerical construction of turbulent solutions for the 3D incompressible Euler equation and its perspectives」

概要: Starting with Kolmogorov’s 1941 (K41) work, infinite Reynolds number flow is known to have velocity increments over a small distance r that vary roughly as the cubic root of r. Formally, such flow is expected to satisfy Euler’s partial differential equation, but the flow being not spatially differentiable, the equation is satisfied only in a distributional sense. Since Leray’s 1934 work, such solutions are called weak. Actually they were already present –very briefly– in Lagrange’s 1760/1761 work on non-smooth solutions of the wave equation. A major breakthrough has happened recently: mathematicians succeeded in constructing rigourously weak solutions of the Euler equation whose spatial regularity –measured by their Hölder continuity exponent– is arbitrarily close to the value predicted by K41 (Isett 2018), Buckmaster et al. 2017). Furthermore these solutions present the anomalous energy dissipation investigated by Onsager in 1949 (Ons49). We shall highlight some aspects of the derivation of these results which took about ten years and was started originally by Camillo de Lellis and Laszlo Szekelyhidi and continued with a number of collaborators. On the mathematical side the derivation makes use of techniques developed by Nash (1954) for isometric embedding and by Gromov (1986, 2017) for convex integration. Fortunately, many features of the derivation have a significant fluid mechanical content. In particular the successive introduction of finer and finer flow structures, called Mikados by Daneri and Szekelyhidi (2017) because they are slender and jetlike. The Mikados generate Reynolds stresses on larger scales; they can be chosen to cancel discrepancies between approximate and exact solutions of the Euler equation. A particular engaging aspect of the construction of weak solutions is its flexibility. The Mikados can be chosen not only to reproduce K41/Ons49 selfsimilar turbulence, but also to synthesize a large class of turbulent flows, possessing, for example, small-scale intermittency and multifractal scaling. This huge playground must of course be explored numerically for testing all manners of physical phenomena and theories, a process being started in a collaboration between Leipzig, Nice, Kyoto and Rome.
(in collaboration with Laszlo Szekelyhidi,Department of Mathematics, University of Leipzig, Germany and Takeshi Matsumoto,Department of Physics, Kyoto University, Japan)
備考:本セミナーは京都大学の流体力学セミナーとの共催で行われました.場所は京都大学理学研究科物理学教室(理5号館)401号室でした.

 

第56回:2018年10月23日(火)16:30−18:00

青木 高明(香川大学 教育学部)
「実地形空間における都市・道路網のパターン形成」

概要: 都市と道路網は社会インフラの根幹であり,その発生原理の探求を目指して数理的研究が行われてきた.先行研究では簡単化のため,周期境界かつ一様平面条件を仮定していたが,現実の地形は高低があり,河川や海岸線がある.本課題では仮説として,外部条件としての地形要因 + 都市と道路網の共発展を記述する単純な時間発展方程式で,現実の都市・道路網の概形が再現できると提案する.これを検証するため,約30m格子の詳細な地形データを活用し,都市・道路形成をパターン形成過程として定式化し,その結果を現実の人口地理分布・道路網と比較する.

 

第57回:2018年12月11日(火)16:30−18:00

望月 敦史(京都大学ウィルス・再生医科学研究所 数理生物学分野)
「ネットワークの構造に基づく細胞分化システムの制御」

Atsushi Mochizuki概要: 多くの生命機能に多数種の遺伝子が関わり,それら遺伝子間の制御関係がネットワークと呼ばれるほどに複雑であることが明らかにされてきた.これら複雑なシステムから遺伝子活性のダイナミクスが生じ,ダイナミクスこそが生命機能の起源なのだと考えられている.例えば,ホヤの初期発生では7通りの細胞の違いが生じるが,この際に働く90の遺伝子と,それらの間の制御関係が遺伝子ネットワークとして同定されている.一方でネットワーク情報は相互作用の骨格だけしか含んでいないため,関数やパラメータなどを仮定した数理モデルを構築し,生命現象の再現を試みるのが通常の数理的方法であった.  これに対して我々は,与えられた制御ネットワークに対し,その構造だけからモデルに依存せず,力学的に重要な一部の分子を決定できる理論を初めて発見した.各ノードが各変数に対応し,各エッジが制御関係に対応するような,有効グラフ上のダイナミクスを考える.ネットワークの構造だけから決まるノードの部分集合Feedback vertex set(FVS)において,力学挙動を観測(もしくは制御)することで,システム全体のダイナミクスを観測(もしくは制御)できることを,我々は証明した.
 この理論に基づき,実際のホヤの90遺伝子を含むネットワークを解析したところ,FVSはわずか5つの遺伝子しか含まないことが分かった.つまり,もし遺伝子ネットワークの情報が完全であれば,5つの遺伝子の活性を制御するだけで,細胞運命のダイナミクスを自由に制御できるはずだ.この仮説を検証するため,実際のホヤ肺を用いて細胞分化システムの制御実験を行った.FVSとして定められた5つの遺伝子を人工的に活性化あるいは抑制する25通りの網羅的制御実験を行った.制御実験の結果得られた操作胚の遺伝子発現の多様性は,正常発生で観察される7通りの細胞分化状態のうち,6通りを含むことが分かった.ホヤの遺伝子ネットワークの情報は,細胞分化を説明する上でほぼ完全でありながら,まだ未解明部分が残ることが示唆された.この研究は,ベルリン自由大学のBernold Fiedler教授と,京都大学大学院理学研究科の佐藤ゆたか准教授らとの共同研究である.