京都大学応用数学セミナー(KUAMS)
過去のセミナー記録:2016年
第27回:2016年2月23日(火)16:30〜18:00
長谷川洋介 准教授(東京大学)
「乱流輸送現象の自在な制御を目指して」
概要: 現代社会は、様々な熱流体システム、エネルギー機器により支えられており、流体やそれに伴う熱・物質輸送現象を自在に制御することは、エネルギーの有効利用、省エネルギー化の促進に向けて、必要不可欠な技術である。一方、学術的には、乱流は、古典力学における未解決問題の一つであり、その高非線形性、マルチスケール性のため、現象の予測や自在な制御は極めて困難である。本セミナーでは、特に壁に沿って流れる乱流(壁乱流)に注目し、乱流摩擦抵抗低減、熱・物質伝達促進等に関する研究動向、及び講演者の最新の結果等をご紹介する。
備考: 本セミナーはCREST連携セミナーとしても開催されます.
第28回:2016年4月19日(火)16:30−18:00
後藤田 剛(京都大学大学院理学研究科数学教室 D3)
「正則化Euler方程式の点渦解を利用したエンストロフィー散逸の数学解析」
概要:二次元乱流を特徴づける性質として, 高レイノルズ数におけるエネルギー密度スペクトル中のエンストロフィーカスケードとエネルギー逆カスケードに対応する領域の出現が挙げられる. 言い換えれば, 二次元乱流とは粘性ゼロ極限における流体のエネルギー保存とエンストロフィー散逸によって特徴付けられる. よって非粘性流体の運動を記述するEuler方程式の解でこのような性質を持つものが存在すれば, 二次元乱流の数学的構造を解析するうえで重要であると考えられる. しかし, 二次元Euler方程式においてエンストロフィー散逸解を直接構成するには数学的な困難が伴う. 本セミナーでは, Euler方程式の正則化方程式である. Euler-$\alpha$方程式を利用したエンストロフィー散逸解の構成について紹介し, 特に点渦の自己相似3体衝突が生むエンストロフィー散逸に関する数学的結果について説明する予定である.
第29回:2016年5月24日(火)16:30−18:00
川原田 茜(京都教育大学)
「偏微分方程式を模倣するセル・オートマトンの構成と解析」
概要: セル・オートマトン(CA)と偏微分方程式はともに数理モデルとしてよく用いられている。前者は”離散モデル”であり後者は”連続モデル”であるという違いはあるが、ひとつの現象に対して両方の数理モデルが立てられていることもあり、それらの挙動はよく似ている。本セミナーではこの2種の数理モデルの関係性について以下のようにアプローチした結果を紹介する。CAモデルを構成する手法としては「統計的CA構成法」が知られている。この手法は実験の観測データ等の実データを用い、それらを統計処理をすることによってデータを模倣するようなCAを構成する方法である。この手法を偏微分方程式の解に適用し、CAを構成した結果とその解析結果について紹介する。
備考: 本セミナーは「京都力学系セミナー」と合同で開催されます.また,本セミナーは東大数理052室で中継されます.
第30回:2016年6月17日(金)16:30−18:00 臨時
Prof. Hans G. Kaper (Georgetown University, Washington, DC, and "Mathematics and Climate Research Network" (MCRN))
「Mathematics and Climate - Challenges for Dynamical Systems」
概要: Mathematical models and statistical arguments play a central role in the assessment of the changes that are observed in Earth's climate system. While much of the discussion of climate change is focused on large-scale computational models, the theory of dynamical systems provides the language to distinguish natural variability from change. In this talk I will discuss some problems of current interest in climate science and indicate how, as mathematicians, we can find inspiration for new applications.
第31回:2016年6月28日(火)16:30−18:00
松岡 千博 教授(大阪市立大学 工学研究科)
「MHD流における非一様電流を伴った渦層の非線形発展」
概要: 密度の異なった流体界面に衝撃波を入射させると,界面はマッシュルーム状に巻き上がる.リヒトマイヤー・メシュコフ不安定性(RMI)として知られているこの現象は,非一様乱流,プラズマ物理,燃焼現象,宇宙物理,慣性核融合等の分野において非常に重要である.本研究では,このRMIに磁場をかけたときに,界面の発展がどのようになるかを理論的に調べた.このMHD RMIは超新星爆発後の星間物質における異常磁場増幅を説明するモデルになり得ると考えられている.界面の発展を計算するために,渦層モデルをMHDに拡張し,”電流渦層”という概念を導入して数値計算を行った.初期に磁場を界面に平行にかけるとその磁場は時間がたっても界面に平行であり続けることが数学的に証明できる.ポテンシャル理論を応用することにより,このような境界条件をもった領域全体の磁場が境界磁場だけから復元できることが示された.講演では,オイラー方程式中に生じる渦層とMHDオイラー方程式中に生じる渦層との違いについても報告する.
備考: 本セミナーは東大数理052室で中継されます.詳細は,齊藤宣一noriazu(at)ms.u-tokyo.ac.jpにお問い合わせ下さい.
第32回:2016年7月19日(火)16:30−18:00
大木谷 耕司(シェフィールド大学 数学統計学教室)
「ナビエ-ストークス方程式の正則性の問題に対する,ウィーナー経路積分に基づく確率論的アプローチ」
概要: 乱流の問題と関係があると考えられている,非圧縮ナビエ-ストークス方程式の基本的問題を,確率論的手法を用いて考察する.臨界変数である,ベクトル・ポテンシャルによって表現された3次元ナビエ-ストークス方程式と,その動的スケール変換された方程式 (ルレイ方程式) を詳細に比較する.特に,経路積分表示に基づき,大域正則性が得られる条件を導出,吟味する.
第33回:2016年8月29日(月)16:00−17:30
Giuseppe Di Fazio(カターニア大学 数学情報教室)
「Strong \(A_\infty\) weights and quasilinear degenerate elliptic equations」
概要: Strong \(A_\infty\) weights are introduced. Then, degenerate elliptic equations with respect to a power of a strong \(A_\infty\) weight are studied. Then, Harnack inequality and local regularity results for weak solutions of a quasilinear degenerate equation in divergence form under natural growth conditions are proved. We stress that regularity results are achieved under minimal assumptions on the coefficients.
第34回:2016年10月11日(火)16:30−18:00
鍛冶 静雄(山口大学 大学院創成科学研究科)
「トポロジーを応用した,計算機による形状処理」
概要: 3次元空間内の形状をコンピューター内であらわす際,一般的には,点群の座標+単体複体といった構造情報を用いる.この構造情報を保ったまま,点の座標のみを動かす変換を作用させることで,基本形状を変形してデザインしたり,キャラクターをアニメーションさせたりすることができる.この様な視点から,様々な場面で,それぞれの入力に応じて実際に変換を構成する手法を紹介する.扱う数学の道具自体は高度ではないが,リー群論や離散幾何のアイデアが応用され,ペンギン計算が行われる様子をお見せしたい.
備考: 本セミナーは東大数理で中継されます.詳細は,齊藤宣一noriazu(at)ms.u-tokyo.ac.jpにお問い合わせ下さい.
第35回:2016年10月22日(土)9:30−16:00
特別企画 応用数学フレッシュマンセミナー
第36回:2016年11月11日(金)16:30−18:00 臨時
張 平文(北京大学 教授)
「Numerical Methods of Quasicrystals and Applications」
概要: In this talk, we will introduce a high-precision numerical method for studying quasicrystals, i.e., the projection method. This method is based on the philosophy that a continuous distributed quasicrystal is a continuous function over a quasilattice. It can be used to study the soft quasicrystals. In particular, the projection method decomposes the quasiperiodic structure by a combination of the almost periodic functions, and provides an efficient algorithm to calculate the combinational coefficients in the higher-dimensional space. At the same time, the projection method provides a unified computational framework for the periodic crystals and quasicrystals. The free energies of the two kinds of ordered structures can be obtained with the same accuracy. Therefore, it can be used to determine the thermodynamic stability of periodic and quasiperiodic crystals in theory. We have applied the algorithm to a series of coarse-grained density functional theories, and obtained 2-dimensional 8-, 10, 12-fold symmetric quasicrystals (computed in the 4-dimensional space), and 3-dimensional icosahedral quasicrystals (calculated in the 6-dimensional space). The corresponding phase diagrams, including periodic crystals and quasicrystals, have been constructed.
備考: 曜日がいつもと異なりますので,ご注意下さい.場所はいつも通りです.
第37回:2016年12月26日(月)17:00−18:30
石渡 哲哉(芝浦工業大学 システム理工学部 数理科学科 教授)
「ある準線形放物型方程式のタイプ2爆発について」
概要: ある準線形放物型方程式の初期値境界値問題を考える.
この問題は,考えている領域がある程度広い場合ではすべての解が有限時間で爆発することが知られている.更に,爆発は領域的に起き,かつ,拡散項を消去して得られるODEから導かれる(ある意味,自然な)blow-up rateよりも速く爆発することが知られている.しかし,その具体的なblow-up rateはこれまで得られていなかったが,1985年にWattersonによって数値的に予測された重対数項を伴うblow-up rateが証明できたので,これについて報告する.
なお,本研究は穴田浩一氏(早稲田大学高等学院)との共同研究である.
備考: 曜日と時間がいつもと異なりますので,ご注意下さい.場所はいつも通りの6号館809号室です.
第38回:2017年1月5日(木)16:30−18:00
西 慧(京都産業大学 理学部 数理科学科)
「非一様性をもつ双安定媒質中でのパルスダイナミクスについて」
概要: 反応拡散系とよばれるクラスの偏微分方程式は,自然界で見られる様々なパターン形成を記述するモデル方程式として広く用いられている.なかでもパルス解やスポット解のように空間的に局在化した解は多くの系でみられる普遍的な構造である.
このような空間局在解については,その存在や安定性などが古くから調べられているが,現実には環境の温度変化や化学物質の濃度勾配などが存在することを考慮して,最近では非一様をもつ系(パラメータが時間や空間に依存して変化する系)でのダイナミクスについても調べられており,その分岐理論的なメカニズムが数値計算や解析により明らかになりつつある.これまでは主に興奮性媒質でみられるパルス解を対象に研究が行われてきたが,一方で双安定媒質においても2つの界面をもつようなパルス解があらわれ,界面間の相互作用により興奮性のものと質的に異なるダイナミクスをみせる.
本講演ではこの双安定媒質でみられるパスル解の非一様媒質中でのふるまいについて,数値計算や解析により得られた結果についてご紹介したい.
備考: 曜日がいつもと異なりますので,ご注意下さい.場所はいつも通りの6号館809号室です.