京都大学応用数学セミナー(KUAMS)

京都大学理学研究科数学教室では,数学の諸分野への応用研究や応用につながる可能性のある数学,また将来において数学の応用が期待される研究分野などから幅広く講師を国内外からお招きし,月一度のペースでセミナーを開いています.応用数学の特性を活かした幅広いテーマで刺激に満ちた講演を多数行っていますので,専門家の方のみならず興味をもたれる関係分野の方の参加を歓迎いたします.

 

今後のセミナー予定

 

第77回:2020年11月10日(火)16:30−18:00


谷地村 敏明(京都大学高等研究院 ヒト生物学高等研究拠点 (ASHBi))
「二相Serrin型優決定問題の局所可解性とその数値計算について」

Yachimura_san概要: Serrin型優決定(過剰決定)問題とは,Dirichlet境界条件に加えてNeumann境界条件が定数となる過剰決定条件(Serrin型優決定条件という)を課したとき,方程式を可解とする領域とは何かを決定する問題である.単一媒質(Laplace作用素)の場合,1971年にSerrinが移動平面法を用いて解決して以来多くの数学者によってその一般化が考察されてきたが,複合媒質(区分的定数関数を係数に持つ楕円型作用素)の場合は係数の不連続性により解析が困難となる.
本講演では,特に二相からなるSerrin型優決定問題において介在物が球に近い場合の局所可解性及びKohn--Vogelius汎関数とH^1勾配法を用いた数値アルゴリズムについて説明し,介在物の幾何学的形状が優決定問題の解となる領域にどのような影響を与えるかについて考察する.
本講演の内容は,Lorenzo Cavallina氏(東北大学)との共同研究に基づく.

備考: 本セミナーは関係者のみ参加によるZoomオンラインセミナーとして行います.



 

第78回:2020年11月17日(火)16:30−18:00


田崎 創平(京都大学 高等研究院 ヒト生物学高等研究拠点 / 理化学研究所 生命機能科学研究センター)
「環境変動に対する枯草菌の集団形態」

Tasaki_san概要: 枯草菌は自然界に広く存在する細菌の一種であり,またモデル生物としてよく研究されてきた.枯草菌の細胞は環境に応じて多様な集団形態を示すことが知られている.また,適当な条件下では頑強なバイオフィルムを形成する.このような集団形態の多様性と頑健性を支えているのが,枯草菌の細胞ダイバーシティーである.枯草菌は環境条件や自身の細胞密度情報,コロニー内の部位などに応じて異なる細胞タイプを選択する.そして,各々の細胞タイプの形成する部分集団は,環境変化に応じて非常に細やかに活動を調節している.さらに,これらの集団間の分業によって,コロニー全体の頑健な成長を実現している.特に多様な細胞タイプからなるバイオフィルムの構造は,様々な機能を実現して長期生育を可能としている.本講演ではこのような枯草菌の集団形態形成について概説する.また,細胞集団の自己制御を記述するマルチレベルな数理モデルによって,非一様な細胞集団の形成機構を説明する.分子生物学の進歩と集団形態変化に関する我々の一連の実験および理論研究が,枯草菌のコロニーパターン形成の未解決問題にひとつの答えを与えることを披露したい.
本研究は,中山まどか氏(仙台高等専門学校),高木泉氏(東北大学 / 中国人民大学),東海林亙氏(東北大学)との共同研究に基づく.

備考: 本セミナーは関係者のみ参加によるZoomオンラインセミナーとして行います.