八ヶ岳フレッシュマンセミナー 第8回 2006年10月6日(金)〜9日(月・祝)   日本数学会教育委員会の主催により,2006年度の数学科および関連学科の新入生および 大学2、3年生のための少人数セミナーを八ヶ岳山麓で下記の通り行います。本セミナ ーの目的は、少人数のセミナーを通して大学での数学の勉強の仕方を学び、さらに 数学の研究者、大学院生、学部学生と寝食を共にして話し合う機会を作ること 目的とします。                             八ヶ岳フレッシュマンセミナー実行委員会 (深谷賢治、斎藤秀司、神保道夫、上野健爾)    日時: 2006年10月6日(金)(午後集合)〜10月9日(月)(昼食後解散) 3泊4日 場所:八ヶ岳自然文化園(長野県諏訪郡原村)http://www.lcv.ne.jp/~bunkaen/ 宿泊:原村ペンションビレッジ 交通: (JR) 中央本線 茅野駅下車→原村ペンション行き、又は美濃戸口行きバス40分     →原村第2ペンションヴィレッジ (ペンション下)下車、徒歩5分 (車) 中央自動車道(小淵沢I.C.)→八ヶ岳鉢巻(はちまき)道路経由15km→ 八ヶ岳自然文化園      中央自動車道(諏訪南I.C.)→10km→八ヶ岳自然文化園 交通の例:   東京方面から:新宿13:00 -------あずさ 19 号 ------ 茅野 15:15 京都,大阪方面から:大阪 ---------新幹線-------- 名古屋      名古屋 13:00 ---ワイドビューしなの 13 号--- 14:45 塩尻      塩尻14:50 ----(普通)---- 15:22茅野 *7日の集合場所:茅野駅改札口を出たところ *7日の集合時間:15:30 *宿の送迎バスで宿に向かいます. 滞在費: 1人1日   約9,000円(1泊3食付き)   滞在費の一部を援助できる可能性があります。旅費は各自の負担になります。 セミナー:  10月6日の午後は講師による講義を行い、その後セミナーを行います。 セミナーは6コースを予定しています。セミナーにはチューターとして大学院生、 学部学生が参加する予定。各コース定員4名。参加者は主として大学1、2年生を 中心にしますが、大学3年生も歓迎します。 申し込み方法:このファイルの下の方にあります。 講師およびテキスト: コースおよびテキスト: (1) 講師:橋本喜一朗(早稲田大学/理工学部・教授)  テーマ: 算術幾何平均と(書かれなかった)ガウスの楕円関数論    正の実数 a,b (a>b>0) に対して a_1:=(a+b)/2, b_1:=(ab)^{1/2} とおくと, a_1 > b_1 >0 が成立することは相加・相乗平均の不等式 として高校でも習いましたが, この操作を繰り返して帰納的に a_{n+1}:=(a_n+b_n)/2, b_{n+1}:=({a_n}{b_n})^{1/2} とおくとき, 2 個の数列 {a_n},{b_n} は共通の極限値に収束します. この値を M(a,b) と表記し a,b の「算術幾何平均」といいます. ここまでは誰でも 判ることですが, このセミナーの参加者はここで以下のような疑問を持つこと が必要です: (問題) M(a,b) は 2 変数 a,b の関数として如何なる式で表されるか?  この問題は, 実は, 天才数学者ガウスが幼少時から抱いていた問題で でした. 1799 年5 月 30 日(19 才), ついにその解答(の端緒)を発見します: ガウスの日記には 「これが証明できれば解析の新分野が開かれるであろう」 と記されています. 実際に, ガウスの発見の背後にあったのは「楕円積分・楕円 関数」および「モジュラー関数」の理論で, これはその後, アーベル, ヤコビに よって独立に発見され, リーマン, ワイエルシュトラス などの研究によって 代数関数論として 19 世紀の数学の最高峰を形成する大理論になります. さらに 20 世紀になると, 楕円関数が定める「楕円曲線」とモジュラー関数は, 数論の最も重要な課題になり華々しい発展をとげます. 例えば, 1994 年に解決 された「フェルマー予想」の証明の最大の鍵は,この楕円曲線とモジュラー関数の 間に成立する不思議な関係「谷山・志村予想」を解き明かすことだったのです.   このセミナーでは, 上記の(問題)に対してガウスの見つけた解答, および それによって開かれた「新分野」とはどんなものかを垣間見るのが目的です. 3 日程度の学習で理解可能な話題に的を絞らざるを得ませんが, その候補として 以下の 3 点を考えています.  1. M(a,b) の積分表示公式(=楕円積分) の証明  2. 楕円積分の級数展開とその逆関数=楕円関数から「加法公式」を導く  3. ガウスによるレムニスケート(連珠)関数と連珠形の 5 等分とその作図 テキストは,   「近世数学史談」(高木貞治 著, 共立全書. 1700 円)のうち   p 29-43(第 6,7 節) および p 50-57 (第 9 節) です. さらに参考書(文献)として次の 2 点から必要な部分を用いることを 考えています.   「The Arithmetic-Geometric Mean of Gauss」David A.Cox, L'Enseignment Mathematique, t. 30 (1984), p 275-330.   「Pi and AGM」J.Borwein and P.Borwein, John Wiley, New York (1987) -------------------------------------------------------------------------- (2) 講師:佐藤周友 (名古屋大学多元数理・助手) テキスト: 「代数学講義」:高木貞二(岩波書店) 方程式は代数学の基本である。われわれは中学で2次方程式の根の公式を習う。 1545年にカルダノというイタリア人が出版した本には3,4次方程式の 解法が論じられた。これはギリシャの偉大な数学の隆盛以来1千年以上 消滅していたヨーロッパの数学が新たなる隆盛、数学ルネッサンスを 迎えていたことを物語っていた。その後人々は5次方程式の解法の発見に 息詰まり、代数学は200年間停滞したのである。この状況を大きく変える発見を したのがガウスである。彼は定規とコンパスだけによる正17角形の作図法を 発見した。この問題は、一見すると幾何学にみえるが、本質的には16次方程式 の解法をを2次方程式を繰り返し解くことに帰着するものである。 この発見は代数学に革命をもたらし、19世紀の更なるふたつの偉大な発見、 アーベルの定理(5次方程式の代数的解法の不可能性)とガロア理論、 につながるのである。(正17角形の作図法はガロア理論の枠組みの中で明快に 説明される。) 代数学講義にはアーベルの定理の証明が書かれている。これを理解することを セミナーの目標にしたい。しかしこれはかなり難解である。これが無理であるよ うならガウスが証明を与えた代数学の基本定理 複素数係数の方程式は(5次であろうが6次であろうが)必ず根を持つ という定理を理解する。(ここで上のアーベルの定理と代数学の基本定理が 一見矛盾しているようでそうでないことを注意しておこう。) -------------------------------------------------------------------------- (3) 講師:津田照久(神戸大学) テキスト:「波動と非線形問題30講」戸田盛和 著 (朝倉書店:物理学30講シリーズ) 「ソリトンの数理」三輪哲二・神保道夫・伊達悦朗 著 (岩波書店) 波動・振動は物理学における最も基本的な現象のひとつです。 水面を伝わる波、振り子の運動、光の伝播、新体操のリボン、、、。 もしも波の振幅が小さければ、 これらは線形の微分方程式によって記述されて、 その解は、重ね合わせの原理(1たす1は2というような算術)により詳しく調べること ができます。 一方、少し大きな波になると、微分方程式は「非線形」となり、その解析は一般に大変 難しい問題です。 ところが、20世紀の後半から、具体的に式で書ける興味深い解をもつ非線形問題が次 々と見つかりました。 安定な孤立波があたかも粒子のようにふるまう物理現象、いわゆる「ソリトン」の発見 です。 セミナーでは、このような「解ける」非線形問題の代表格である KdV 方程式を中心に、 不思議なソリトン現象の背後に隠された様々な数学的構造を探求したいと思います。 テキストからは「波動と非線形問題30講」の6〜9章と 「ソリトンの数理」の1〜3章を中心に読んでいきます。 現在もなお活発に研究が続けられている可積分系の世界を垣間見てみませんか? -------------------------------------------------------------------------- (4) 講師:高橋篤史 (京都大学数理解析研究所・助手) テキスト: 「特異点とルート系」:松沢淳一(朝倉書店) このテキストは,クラインという19世紀の数学者が研究した, ユークリッド空間の合同変換のなす有限群の話です. 最後は,大学院レベルの話になりますが, 正多面体やその対称性の話から始まり,易しく書かれています. セミナーでは参加者にあわせて,読む部分を選ぶ予定です. クラインの考えた群は,正多面体以外にもリー群や代数幾何学の 特異点とも関わっていて,とても興味深い対象です. 最近では超弦理論への応用も研究されていて,講師の高橋さんは その専門家です. 「一見異なる数学の間にある不思議な対応関係」を肌で感じるのがねら いです。 -------------------------------------------------------------------------- (5) 講師:坂井秀隆(東京大学大学院数理科学研究科・助教授) テーマ : 量子力学と特殊関数と表現論 テキスト: 「特殊函数」,犬井鉄郎著,岩波全書,(第 2 章から第 4 章) 「リー代数と量子群」,谷崎俊之著,共立叢書現代数学の潮流, (第 1 章と 2,3 章の一部) を考えているが,どちらも,ごく一部しか使わない. 物理や化学の知識については,水素原子模型について述べられ ている量 子力学あるいは量子化学の本があれば,どれでも参考 になると思う. 文明史的な見方をすれば,ニュートン力学は占星術に,量子力学は錬金 術に説明を与えたなんてことがいえるかもしれない. 物質の性質は電気的な要因でその説明がなされるわけだが,原子核のま わりの電子の配置に付いては,シュレーディンガー方程式によって記述されるこ とが知られている.原子核のまわりに電子が一つだけある場合のシュレーディン ガー方程式については,解を厳密に計算できる.しかし原子核のまわりに複数の 電子が舞っているような状況だと,問題は簡単ではない.それでも,一電子の場 合の解を使った近似を考えることにより,多電子の場合についても,化学におけ る知見を得ることができる. セミナーでは,一電子の場合の方程式を解くときに必要となる数学的知 識を,とくに,特殊関数論と表現論にしぼって勉強する(量子力学については深 入りしない). -------------------------------------------------------------------------- (6) 講師:菊池誠(神戸大学工学部・助教授) テキスト: 「数理論理学」(竹内外史著,培風館)第1,2章 ゲーデルの第一不完全性定理は,自然数論を含む無矛盾で帰納的な公理系 (何が公理であるか判定するアルゴリズムのある)は不完全であることを, すなわち.それ自身もその否定も証明できない命題があることを言い, 第二不完全性定理はその公理系の無矛盾性を意味する論理式はその公理系 では証明できないことを言う.不完全性定理はその主張の哲学的な装い から哲学や認知科学といった数学の外部からも興味を持たれることが多いが, 数理論理学における最も基礎的な定理として数学的に技術的に重要な定 理であって,二つの公理系の強さの比較や,ある問題に対するアルゴリズムの 非存在の証明の際に役立つ強力な道具でもある. 「整数係数の多項式が整数解を持つかどうか一般的に判定するアルゴリ ズムを示せ」というヒルベルトの第10問題に対するマティヤチェビッ チらの否定的解決,すなわち,そうした一般的なアルゴリズムの非存在の証明 にも不完全性定理は深く関わっている.不完全性定理の証明の鍵の一つは 計算機の出力として定義される自然数の集合が特定の形の論理式で表せる ことにあるが,ヒルベルトの第10問題の否定的解決の最も重要な 部分は その証明の詳細化にある.このセミナーでは不完全性定理とヒルベルトの 第10問題の否定的解決の概要の紹介と,鍵となるいくつかの定理の証明を 目標とする.不完全性定理もヒルベルトの第10問題も本質的に自然数を 対象とするものであり,議論の多くは数理論理学というようり初等整数 論に関わるものになる. テキストでは不完全性定理に関する記述が少ないのでテキスト以外の資 料を用いる可能性もあるが,その場合はあらかじめ配布する予定でいる. --------------------------------------------------- 応募方法: 8月31日必着で   1. 氏名、所属大学、所属学部・学科・学年    2. 連絡先住所(帰省先など休み中の連絡先も要),電話番号, あればFax番号   3. e-mail アドレス   4. 希望するコース(上の番号)を第一希望、第二希望まで記すこと. を記した葉書、手紙、Faxを   606-8502 京都市左京区北白川     京都大学理学研究科数学教室    八ヶ岳セミナー係 へ送付してください。e-mailの場合は mugen@math.kyoto-u.ac.jp  に手紙と同じ要領で送って下さい。 申し込み多数の場合は先着順とします。 八ヶ岳フレッシュマンセミナー係 電話:075−753−3707 ファクス番号:075−753ー3711 e-mail: mugen@math.kyoto-u.ac.jp ==========================================================