結合系セミナー


連絡先:京都大学大学院理学研究科数学教室 國府寛司
    TEL:075-753-2665; FAX:075-753-3711
    Email:kokubu [at] math [dot] kyoto-u [dot] ac [dot] jp

【第22回】
日 時:2012年7月3日(火曜日)午後3時から
場 所:京都大学理学部 6号館 南棟8階の809セミナー室

講演者:末谷大道氏(鹿児島大学理学部・JSTさきがけ・理研基幹研)
題 目:カオス結合系の同期・非同期ダイナミクスとその数理

概 要:素子がカオス的な力学系で構成される結合カオス系の研究は既に四半世紀を超える歴史を持ち,さまざまな現象が生まれることが知られるようになった.一方で,周期振動子結合系に比べて現象は個別的で理論的な解析も困難なため,その一般的な機構の解明は十分に進んでいない面もある. 本講演では,比較的少数個から成るカオス結合系で,(物理としては)その発生機構の理解もされている幾つかのトピック:
 ・完全カオス同期(complete chaos synchronization)に関わる riddling 分岐や blow-out 分岐とそれに伴う riddled basin や on-off 間欠性,in-out 間欠性の大偏差的性質
 ・カオス位相同期の破れに伴って現れる位相スリップの異常統計性と離散写像を用いた解析
 ・一般化同期 (generalized synchronization) の基本的性質とカーネル多変量解析を用いた解析,共通ノイズ同期や松本・津田らの雑音誘起秩序 (Noise-Induced Order) との関係
 ・予期同期 (anticipating synchronization) における同期状態の安定性解析
について,講演者の研究及び以前所属していた藤坂研究室で進められた研究を中心に話題を提供する.


なお,セミナー終了後に懇親会を計画しています.ご参加いただける方はお知らせください. 多くの方のご参加をお待ちしています.


今後の結合系セミナーの予定
次回は未定です.講演者を募集しています.



結合系セミナー関連情報
結合系に関連する京都近辺のセミナー情報などを掲載しますので,情報をお持ちの方はお知らせください.また,結合系メーリングリストでも情報の交換を行っています.結合系メーリングリストについて詳しくは国府までお問い合わせください.


以下は終了済みのセミナーの記録です

【第22回】
日 時:2012年1月17日(火曜日)午後2時から
場 所:京都大学理学部 6号館 南棟8階の809セミナー室

講演者:青木高明氏(香川大学教育学部)
題 目:Self-organized network of phase oscillators coupled by activity-dependent interactions

概 要:シナプス結合のように,活動依存的に結合が変化する結合力学系の特性を調べる.結合が動的に変化する持つ系では,自己組織的に結合関係が構築される.このプロセスを解明するための一歩として,位相と結合が共に発展する位相振動子モデルを導入し,その力学系の定常解を調べた.また発展研究として,位相と位置関係が共に発展する振動子集団の「群れ」を考え,その自己組織化過程について報告する.

【第21回】
日 時:2011年6月30日(木曜日)午後3時から
場 所:京都大学理学部 6号館 南棟8階の809セミナー室

講演者:徳田 功氏(立命館大学理工学部マイクロ機械システム工学科)
題 目:計測データからの位相ダイナミクスの推定

概 要:弱結合したリミットサイクル振動子の結合系について,計測データからシステムの位相方程式を推定する方法について紹介する.特に,この方法を結合行列の推定へ応用し,データから振動子間結合の方向性が検出できることを示す.実験データへの応用例として,電気回路および電気化学振動子への適用結果を紹介する.


【第20回】
日 時:2010年11月30日(火曜日)午後1時半から(時間が変更になりましたのでご注意ください)
場 所:京都大学理学部 6号館 南棟8階の809セミナー室

第1部 午後1時半から3時半ころまで
講演者:宮路智行氏(京都大学数理解析研究所)
題 目:質量保存則を持つある結合振動子系に関する数学解析

概 要:アメーバ状の単細胞生物である真性粘菌変形体は、細胞内部での化学物質濃度の変化に伴い細胞が収縮弛緩を繰り返す。ある状況では、粘菌の外縁部と内縁部とで振動が逆位相になる。この振動を説明するため、小林亮教授(広島大)らにより、保存則を伴う結合振動子系モデルが提案された。空間的に非一様な秩序を伴う振動パターンの発生は、典型的には、空間一様な定常解が空間非一様な振動モードに対して不安定化するwave instabilityによると考えられる。我々はこのモデルで wave instability が起こりうることを証明した。一方、粘菌を非線形振動子と見なし結合振動子系としての性質を調べる実験が高松敦子教授(早稲田大)らにより行われている。リング状に結合した三振動子系について、先述のモデル方程式を参考にしたtoy modelを作り数値シミュレーションを行った結果をいくつか紹介する。


第2部 午後4時から5時半ころまで
講演者:森田英俊氏(京都大学大学院理学研究科)
題 目:結合Hamilton系における集団運動

概 要:振り子や非線形振動子が大域的に結合したHamilton系(*)を考える。この系は熱力学系であり、通常の統計力学により平衡状態が与えられる。それに対し、平衡から遠い初期条件を与えたところ、巨視的な物理量、例えば平均場が周期的・準周期的に振動する状態が出現する。この振動状態は平衡への緩和途中に実現する非平衡準安定状態で、系の自由度が有限の場合はそこから脱して最終的には平衡へと緩和するものの(熱力学の要請)、自由度無限大極限では持続時間が発散する。また、この振動はHopf的な分岐により現れることが示唆される。つまり微視的な大自由度カオスの中に巨視的な低自由度力学系の構造が埋め込まれているといえる。さらに、動的な自己無撞着理論により、この振動状態の安定性について説明する。時間があれば、数理的構造がよく似た二次元流体系に見られる同様な現象についても述べる。

(*)振り子の場合、固有振動数の代わりに運動量を持った蔵本モデルと見ることもできる。


【第19回】
日 時:2010年3月12日(金曜日)午後2時から
場 所:京都大学理学部 6号館 南棟6階の609セミナー室

講演者:西川 功氏(東京大学大学院情報理工学系研究科)
題 目:大域結合位相振動子系が示すカオスの非拡散性

概 要:大域結合位相振動子系(例えば蔵本モデル)が生じるカオスを調べる.系の拡散運動を特徴づけるために,系の秩序変数を速度とみなし,それを時間的に足しこんだ量の拡散を見る.その拡散係数をDと書く.Dはよく知られたモデル(イジングモデルなど)では同期非同期の転移点近傍でベキ的に発散する.しかし,大域結合位相振動子系では,結合強度を転移点より強い方から転移点に近づけたときDは発散しない.つまりDは,系が同期を示しているときは他の物理量の臨界指数から独立である.この結果は数値的に得られ,理論的にも説明できる.


【第18回】
日 時:2009年11月10日(火曜日)午後2時から(場所が変わっています.このセミナーで初めて使う部屋です.ご注意ください)
場 所:京都大学理学部 3号館 109セミナー室

講演者:山口義幸氏 (京都大学大学院情報学研究科)
題 目:Hamiltonian mean-fieldモデルにおける準定常状態の統計力学と運動論

概 要:多自由度ハミルトン系では、初期状態は時間の経過とともに熱平衡状態へと緩和する。しかし長距離相互作用を有するハミルトン系では、熱平衡状態への緩和途中で準定常状態と呼ばれる状態に長時間トラップされることがしばしば観測される。トラップされる時間は系に含まれる粒子数のベキで増大するため、実際上は準定常状態しか観測できないこともあり得る。そこで、準定常状態を記述する統計力学と、準定常状態への緩和を記述する運動論が必要となってくる。
本セミナーでは、典型的な長距離相互作用である平均場相互作用を持つHamiltonian mean-field モデルと呼ばれる系において、熱平衡状態における統計力学の結果と熱平衡への緩和の様子を紹介した後に、準定常状態の(i)統計理論と(ii)運動論へと進む。(i)統計理論としては、ハミルトン系が持つ保存則に着目したLynden-Bell 統計を用いた結果を述べる。(ii)運動論としては、短時間での系の時間発展を記述する Vlasov 方程式を導入し、この分散関係を調べることで、どのような準定常状態が実現されるかを議論する。特に、空間一様な初期状態に摂動を与えたとき、準定常状態でクラスターが発生するかどうかについて議論する。

【第17回】
日 時:2009年10月13日(火曜日)午前10時から(時間が変わっています.ご注意ください)
場 所:京都大学理学部 6号館 南棟6階の609セミナー室

講演者:青井伸也氏 (京都大学大学院工学研究科)
題 目:構成論的アプローチに基づくシステム工学的歩行研究

概 要:ヒトや動物は、複雑な筋骨格系を協調的に動かし、多様な環境のもとで適応的な歩行運動を実現している。歩行運動は、脳神経系と身体筋骨格系、そして環境との力学的相互作用を通して形成される非常に秩序だった全身リズム運動であり、従来より、運動神経生理学やバイオメカニクスなど多くの分野で研究が行われている。工学的には、生物学・生理学的な知見を基に神経筋骨格系のシステムモデルを構築し、動力学シミュレーションを通して歩行運動を再現することで、歩行運動の生成メカニズム・神経制御系の役割を明らかにする研究や、歩行運動を説明する本質的な要素を抽出したシンプルモデルに基づく数理解析から、その力学構造を明確にする研究などが行われている。本講演では、特にヒトの2足歩行を中心に、多足歩行、4足歩行など生体の歩行運動に関してこれまで行った研究に関して紹介する。

【第16回】
日 時:2009年9月15日(火曜日)午後1時半から
場 所:京都大学理学部 6号館 南棟6階の609セミナー室


今回はダブルヘッダーです.また,千葉逸人さんの送別会を兼ねています.

(1)1時半から3時頃
講演者:小室元政氏 (帝京科学大学)
題 目:結合力学系における準周期進行波アトラクターの発生・ 消滅・分岐のメカニズム

概 要:Coupled Map Lattice(CML:空間1次元・隣接拡散結合・周期境界・ロジスティック写像結合系)におけるTraveling Wave(TW:準周期進行波アトラクター)の分岐解析をおこなう。主に20次元以下の系を個別的に解析するが、その結果から、任意の次元のCMLが族として共通に持つ性質を導きたいと考えている。今回の講演では主に以下のことについて述べる。
1.TWの発生・消滅の経路にSaddle-Node Circle(SNC)経路とHeteroClinic Circle(HCC)経路の2種類があること。
2.TWが進行方向と横断的な方向に不安定化し分岐を起こす際、一般的に、ぷっくりした膨らみを生じ、区分的に不安定化すること。
3.片側結合のCMLからの延長を考えることにより、TW領域の変形を系統的に考えることができること。

(2)3時半頃から(開始が少し遅れる場合があります)
講演者:千葉逸人(京都大学大学院情報学研究科)
題 目:結合振動子系と無限次元力学系の展望

概 要:大自由度の結合振動子系に関連して、無限次元力学系のこれまでとこれからについて、独断と偏見に満ちた解説を行います。特に問題提起を中心に話したいと思います。


終了後,千葉さんの送別会を兼ねて懇親会を計画しています.ご参加いただける方はお知らせください.多くの方のご参加をお待ちしています.

【第15回】
日 時:2009年7月28日(火曜日)午後2時半から
場 所:京都大学理学部 6号館 南棟6階の609セミナー室
(前回のご案内から会場が変更になりました.ご注意ください)

講演者:Ma Yue 氏 (Spatio-Temporal Order Project, ICORP, JST/ Dept. of Physics, Graduate School of Science, Kyoto University)
題 目:Making of spatial and temporal periodicity in a discrete cell chain

概 要:
Spatial-temporal pattern formation has been well studied in continuum, rather than in discrete media. A cell-based model, however, can never be a real continuum due to the finite size of cells. We put our focus on the discrete cell chain, i.e., a one-dimensional coupled cell system. Two types of periodicity have been studied: (1) self-sustained collective oscillation generated in NON-oscillatory cells; (2) stationary periodic spatial pattern with consideration of clock and growth. Biological and theoretical significances will be introduced.

講演終了後,懇親会を計画しています.多くの方のご参加をお待ちしています.

【第14回】
日 時:2009年6月16日(火曜日)午後1時半から(曜日・時間が変わっています.ご注意ください)
場 所:京都大学理学部 3号館 3階の305セミナー室

講演者:石川将人氏(京都大学大学院情報学研究科)
題 目:非ホロノミックシステムの力学・制御・数理

概 要:
非ホロノミックシステムとは,解析力学において積分可能でない拘束条件を持つ系のことをいうが,力学だけでなく工学的,数理的にみても非常に興味深い性質を有している.制御理論の立場からみるとこれらは複雑な可制御性構造をもつシステムであり,可制御であるにもかかわらず連続な状態フィードバックによる安定化ができず,線形制御理論が通用しない「本質的に非線形な」制御対象である.またロボティクスの立場からは,少ないアクチュエータ数で多彩なふるまいを示すロボットとして実現される.そしてこれらの特徴は微分幾何・位相幾何的な性質によって互いに密接に結び付けられている.本講演では,非ホロノミックシステムの解析・設計に現れる諸問題とその背後にある数理を実例を交えて紹介する.

講演終了後,懇親会を計画しています.多くの方のご参加をお待ちしています.

P.S. 6月10日(水曜日)に数学教室で一宮さんの談話会講演がありますので,こちらにも多くの方のご参加を期待しています.場所は理学部3号館127大会議室です.談話会は4時半からですが,4時から談話室でお茶とお菓子が出ます.

【第13回】
日 時:2009年3月18日(水曜日)午後2時から(曜日・時間が変わっています.ご注意ください) 
場 所:京都大学理学部 3号館 3階の305セミナー室

講演者:坂元国望氏(広島大理学研究科数学教室)
題 目:蔵本モデルの定常解について-振動数分布の非対称性と特異摂動の観点から-

概 要:
 結合振動子系(連続極限版)の定常解について考察する。蔵本モデルの枠組みでは、振動子系の個性は振動数分布関数に反映されているが、従来の研究は対称な振動数分布を持つ場合に関するものが圧倒的に多い。講演では、振動数分布関数が対称でないとき、ノイズがある場合・ノイズがない場合の両方に対して、定常解の構造がどのように変化するのか、自明定常解(完全非同期解)からの定常分岐やHopf-分岐の様子がどのように変わるのか、などについて報告する。例えば、振動数分布が平均の周りの非対称な双頭分布の場合、ノイズあり系に対して自明定常解からの分岐は必ずHopf-分岐である。この場合、特定のパラメーター領域においては、Hopf-分岐が三回起こることも判明した。さらに、ノイズ強度が 0 の極限とノイズなしの場合の定常解の関係についても、得られた部分的な結果について報告する。

【第12回】
日 時:2008年12月25日(木曜日)午後1時半から(曜日・時間が変わっています.ご注意ください) 
場 所:京都大学理学部 3号館 3階の305セミナー室

講演者:千葉逸人氏(京都大学情報学研究科)
題 目:非同期状態における蔵本モデルの流れの性質

概 要:
 蔵本モデルにおいて結合強度が転移点よりも小さい場合の流れの挙動を調べる。
(i) 有限次元の蔵本モデルの場合は非常に複雑な運動が起こりうる。ここでは目まぐるしく安定性を変える不変トーラスや chaotic attractor の存在を示す。
(ii) 無限次元の蔵本モデルにおいては複雑な運動は消失し、インコヒーレントな状態が(中立)安定になる。ところが無限次元特有の現象として、線形化方程式の全てのスペクトル(固有値)が虚軸上にあるにも関わらず、解が指数的に減少しうる。ここではこの事実について詳しく解説し、[Strogatz et. al (1991,1992)] の厳密化と一般化を与える。
(iii) 蔵本モデルを解のモーメントたちについての方程式に書き直してやると、有限次元の場合と無限次元の場合の方程式を同一の方程式で書くことができる。次元に関する情報は初期条件としてのみ入るため無限と有限を同じ相空間の中で議論することができ、特に有限次元の場合に起こる解の"ゆらぎ"の存在を無限次元の解からの分岐として示すことができる(だろうという妄想を紹介する)。

【第11回】
日時: 2008年11月25日(火曜日)午後1時から(時間が早くなっています.ご注意ください) 
場所: 京都大学理学部 3号館 3階の305セミナー室

講演者:中尾 裕也氏(京都大学理学研究科物理学第1教室)
題 目:ランダムネットワーク上のTuringパターン
概要:ランダムネットワーク上のactivator-inhibitor系の示すTuringパターンについて述べる。系の線形安定性はネットワークのLaplacian固有ベクトルを用いて調べることができ、通常のTuring不安定性と同様に、抑制化因子が活性化因子より十分に速く拡散する時、一様定常解は不安定化する。例としてスケールフリーネットワーク上の三村-Murrayモデルを用いた数値計算では、系の最終的な非一様定常パターンは臨界固有モードとは大きく形状が異なることが分かるが、この定常パターンは、ランダムネットワークの平均場近似と外場を受けた単一のTuring素子の分岐図を用いることで、ある程度説明できることを述べる。余裕があれば、同様な解析が可能なランダムネットワーク上の結合リミットサイクル系におけるdiffusion-induced chaosについても簡単に紹介する。

【第10回】
日時: 2008年10月28日(火曜日)午後3時半から 
場所: 京都大学理学部 3号館 3階の305セミナー室

講演者:一宮 尚志氏(京都大学理学研究科数学教室)
題目:複雑ネットワーク上のダイナミクス
概要:BarabasiとAlbertによる「スケールフリーネットワーク」の発見以降確立された「複雑ネットワーク」の概念は、工学、生物学、物理学、社会学など、あらゆる分野の研究に影響を与えている。こうしたネットワーク上でのダイナミクスの研究は、応用上も理論上も非常に興味深い。本講演では、まず複雑ネットワークについて簡単にレビューした後、複雑ネットワーク上で起こる興味深いダイナミクスの例として、蔵本転移と呼ばれる同期現象、コンタクトプロセスと呼ばれる感染症のダイナミクスなどに関する研究の結果を紹介する。

なお,講演終了後に一宮さんの歓迎会を兼ねて懇親会を行いたいと思いますので,ご参加いただける方は國府までお知らせください.

【第9回】
日時: 2008年8月25日(月曜日)午後3時から 
場所: 京都大学理学部 6号館 (南棟)609号室
(今度は6号館で3時からです.しょっちゅう時間や場所が変わって申し訳ありません.)

講演者:吉村 和之氏(NTTコミュニケーション科学基礎研究所)
題目: 非同次ポテンシャルを持つ非線形格子の積分不可能性
概要:ハミルトン力学系の性質を特徴付ける上で,可積分性の判定は基本的な問題の一つである.与えられたハミルトン系に対して解析的積分の非存在を示す手段として,Ziglin解析が知られている.Ziglin解析について説明を行い,非同次ポテンシャルを持つ非線形格子の積分不可能性に関する結果を述べる.

終了後,講演者を囲んで簡単な懇親会を行いたいと思いますので,ご参加いただける方は国府までお知らせください.

【第8回】
日時: 2008年5月29日(木曜日)午後1時から 
場所: 京都大学理学部 3号館 1階127号室
(いつもと時間,場所が違います.127号室へはお手数ですが3号館正面玄関から2階へ上がり, 誘導の矢印に従ってお回りください.)
講演者:新井賢亮氏(京都大学・理学研究科)
題目: 共通揺動外力による非線形素子のコヒーレンス (ネットワークでのtransientなリズム作り)
概要:結合された自律素子(固有のダイナミクスで活動をする素子)の間に生じる同期現象は、17世紀にHuygensが隣り合う二つの振り子時計の同期に気づいた時から知られている。近年では結合によらない同期のメカニズムとして、共通揺動外力による同期現象(stochastic synchronization, coherence)が研究者の注目を受けている。また、これと本質的に同じ現象として、単一の素子が共通の揺動外力を繰り返し受けると応答の再現性(reproducibility)が向上することが知られている。この現象は、一見全然似通っていないシステム、例えば大脳皮質及び嗅覚の神経細胞[Mainen & Sejnowski 1995; Galan et. al, 2006]、カオスレーザー[Uchida & Roy, 2004]、カオス振動子[Pikovsky et. al, 2001]、離島での動物の個体数変動[Royama, 1992]など、様々な系で生じることが知られており、この現象の背後には何らかの普遍的なメカニズムがあるものと思われる。共通駆動を受けて脱同期する状況もあるので、この現象は決して自明ではない。
 具体的に共通揺動外力を受けた自律素子として、ランダムなポワソン過程で生成されたインパルス列に駆動されるリミットサイクル振動子を扱う。リミットサイクル振動子は安定な周期軌道を持つため、一様に増大する位相一つで系を記述することができる。系の外力への応答は位相応答関数 (Phase Response Curve, PRC) [Winfree, 1980]を用いて定量化され、位相縮約法[Winfree, 1980; Kuramoto, 1984] により、共通揺動外力による同期現象を一般的に解析することができる。位相応答関数 $G(\phi, \bm{c})$ は、振動子が位相$\phi$の状態で大きさ $\bm{c}$ の摂動を受けた時、振動子の位相がどれだけ進むか、あるいは後退するかを表し、非線形振動子の性質を特徴づける基本的な関数である。同期状態の安定性と振動子間の位相差の定常分布を、それぞれ確率微分積分方程式、Frobenius-Perron方程式で位相応答関数を用いて求める。

【第7回】
日時: 2008年4月24日(木曜日)午後2時から 
場所: 京都大学理学部 3号館 3階の305セミナー室
講演者:青柳富誌生氏(京都大学・情報学研究科)
題目: 振動子系のネットワーク構造とダイナミクス
概要: 運動の基本的なものとして振動現象があるが,その中でも散逸系が示す安定な周期解(リミットサイクル解)は普遍的に存在している.また,そのような複数の系が集まり,集団として同期する現象も広く観測されている.このような同期現象を統一的に理解しようという数理モデルが位相振動子系である.本講演では,従来の視点としては欠けていたと思われる以下の二つの点に関して研究を行ったので報告したい.最初に紹介する位相振動子ネットワークの同期性に関する研究では,「あるネットワーク構造を与えたときに振動子がどのよう振舞うか」という従来の視点ではなく,「同期に最適な結合ネットワークがどのようなものになるのか」という逆の視点で研究を進めた結果を報告する.このような方針を取ることで,既存のネットワーク構造にとらわれずに新しいネットワーク構造を探索できる可能性がある.本研究では (1) 対称性などを仮定した上で,同期に最適な結合パターンの候補を理論的考察により調べる;(2) マルコフ連鎖モンテカルロ法(MCMC) を用いて確率的に大域探索する,の二つの方針で研究を行った.その結果,位相オーダーを最適化した結合パターンと振動子オーダー最適化のパターンは異なる事などが判明した.次に,ネットワークの結合強度自体が位相に依存してゆっくり変化するダイナミクスを導入し,系全体がどの様な振る舞いが見られるか系統的に整理を行った.結論は典型的には次の3つの状態(a) 2クラスター状態に初期条件に依存して収束 (b) 初期条件の互いの位相差の因果関係を保った状態に収束 (c) 非定常なカオス状態,が見られることがわかった.これらのそれぞれの情報論的意義も議論できればと考えている.

【第6回】
日時: 2008年1月31日(木曜日)午後3時から(!!前回と時間・場所が違います.ご注意ください.)
場所: 京都大学理学部 6号館 (南棟)609号室
講演者:千葉逸人氏(京都大学・情報学研究科)
題目: In-phase and Anti-phase Synchronization of Coupled Metronomes
概要: 糸で吊るされた自由に揺れる板の上に2つのメトロノームを乗せて得られる (2+1)素子の結合系を考える。板を吊るしている糸の長さをパラメータとするとき、 (i) 同相同期解のみが安定、(ii)逆相同期解のみが安定、(iii) 同相同期解と 逆相同期解のどちらも安定、になるようなパラメータ領域が存在することを くりこみ群の方法で示す。 ここでくりこみ群の方法とはODEに対する強力な摂動法の一種であり、特に様々な 古典的摂動法を特別な場合として含むことが分かっている。 講演では前半でくりこみ群の方法の一般論を準備し、後半でメトロノームの結合系に 対して上記の事実を証明したい。

なお,メトロノームの実験の動画が 千葉さんの web pageから見られるようになっていますので,興味あるかたは是非ご覧ください。

【第5回】
日時: 2007年11月29日(木曜日)午後2時から(!!前期と時間・場所が違います.ご注意ください.)
場所: 京都大学理学部 3号館 3階の305セミナー室
講演者:薄 良彦氏(京都大学・工学研究科)
題目: 大停電の非線形動力学 〜 結合系からのアプローチ
概要:
2003年米国・カナダ, 2006年東京における大停電(cascading blackout)は, 私共の生活へ与えたインパクトの大きさから, 広くその発生が知られています. 電力ネットワークの大停電は電力の安定供給を妨げるものであり, その動特性の 解明と制御(低減)手法の確立は工学的観点から重要です. 本発表では, 大停電に 関連した電力ネットワークの動揺現象と collective instability について検討 します[1]. 検討には大自由度ハミルトン系, Proper Orthogonal Decomposition (POD), 位相面図などを用いて, ネットワークに加わった擾乱がどのように個々の 発電機やネットワーク全体の動特性に影響を与えていくかを, 結合系の動力学 として議論します. なお, 本発表の内容は Professor Igor Mezic (UCSB), 引原 隆士 教授 (京大)との共同研究により得られたものです.
[1] Y. Susuki, I. Mezic, and T. Hikihara, Global instabilities of power grid coupled pendula-like models, SIAM Conference on Applications of Dynamical Systems, Snowbird, USA, May 28-June 1 (2007).

なお,終了後,講演者を囲んで懇親会を行う予定ですので,ご都合のつく方はそちらもどうぞご参加ください.

【第4回】
日時: 2007年10月31日(水曜日)午後2時から4時頃まで(!!前期と曜日・時間・場所が違います.ご注意ください.)
場所: 京都大学理学部 3号館 3階の305セミナー室
講演者:小室元政氏(帝京科学大学・生命環境学部)
題目: 結合写像系、結合ODE、反応拡散方程式 −分岐現象の類似点と相違点− 
概要:
Coupled Map Lattice (CML)の分岐について話します。CMLは、局所写像としてロジス ティック写像をとり、これらを周期的境界条件で隣接結合させた結合離散力学系です。 結合させるロジスティック写像が10以上のとき、4周期を基底とする進行波アトラクタが 存在します。この講演では、安定2周期点、安定4周期点の分岐を系統的に追跡することにより、 進行波アトラクタの発生機構を解明します。 また、レスラー微分方程式を周期的境界条件で隣接結合させた結合常微分方程式系において、 ポアンカレ写像の安定2周期点、安定4周期点の分岐構造が、CMLの場合に似ており、CMLで 見られる進行波アトラクタが、このシステムでも観測されることを示します。 更に、結合レスラー系の結果に対応する、反応拡散方程式の振る舞いについて話します。

【第3回】
特別編として「歩行の数理」小研究会を行いました.
日時: 2007年7月25日(水曜日)午後1時から26日午後1時頃まで
場所: 京都大学理学部3号館 第110講演室
プログラム

7月25日午後6時半から懇親会を予定しております.ご参加いただける方は 7月23日までに国府宛にメールでお知らせください.

この回で前期の結合系セミナーは終了とし,次回は10月以降の予定です.

本研究会に密接に関連する Prof. K. Pearson (Univ. Alberta, Canada) の 講演会があります.詳しくは こちらをご覧下さい.

【第2回】
日時: 2007年6月28日(木曜日)午後0時半から2時半頃まで(昼食持ち込みOKです)
場所: 京都大学理学部 6号館 (南棟)609号室
講演者:國府寛司
題目: Golubitsky-Stewart による coupled cell network 理論の紹介
概要:
 Golubitsky, Stewart らによる coupled cell system の理論の簡単な紹介をし, その今後の可能性を議論したい.参考文献として以下を挙げておく:
      Golubitsky の関連論文のページ
     2006年の数理研での Golubitsky の連続講義の記録

【第1回】
日時: 2007年5月24日(木曜日)午後0時半から2時半頃まで(昼食持ち込みOKです)
場所: 京都大学理学部 6号館 (南棟)609号室
講演者:中尾裕也氏(京都大学大学院理学研究科物理第1教室)
題目: 結合振動子系における連続極限について
概要:
 結合振動子系における連続極限(素子数無限大の極限、熱力学極限)に関して、 蔵本モデルの解析などに使われる標準的な平均場近似に関する古典的な事項、 それに関連する最近のいくつかの研究、また、連続極限をとった系と有限個の 素子系の挙動の関係などについて、個人的な経験を交えて断片的にレビューしたい.